仁王雅治

ピヨ月プリ日(プピ)

 幸村が赤也に日記をつけさせとるのは知っとったが、二日目にして部室に忘れて帰るとは、さすが赤也じゃ。むしろあいつはなんで日記を持ち歩いとるんじゃろうか……。

 そんなわけなんで、今日は馬鹿な後輩の変わりに俺が書いちゃることにしようかの。こんなに優しい先輩を持ったおまえさんは幸せじゃな。
 ところで赤也、『幸村』が『辛村』になっとるんじゃが、これは幸村に見つかる前に訂正しとかんとお仕置きされるぜよ。まあ訂正したところで俺が幸村にチクるんで無駄なんじゃが。赤也ドンマイ。あと平仮名ばっかりで読みづらい。もっと漢字の勉強しんしゃい。

 それにしても、俺が知らんだけで、世の中にはけっこう変な女がおるんじゃな。

 俺のクラスにも今日、変なのが来よった。

 転校生のことなんじゃが、担任の後ろにくっついて入ってきたそいつは、ガチガチに緊張しとるみたいじゃった。その時は内気な奴なんじゃろうなと思ったくらいで、特に興味をそそるようなもんはなかった。

 じゃが、そいつは俺の予想の斜め上を突っ走っとるような女じゃった。自己紹介を江戸っ子口調でやる女なんぞ俺は初めて見たぜよ。

 本人は生意気にも女子力がないのを気にしとるようじゃったが、そんなもん以前にあいつはただの阿呆じゃ。阿呆じゃが……まあ、とりあえずこれから退屈せずに済みそうじゃな。

 今日はあいつにステーキな味のガムを食わすことが出来んかったんで、明日は得意のペテンで絶対に食わしちゃる。覚悟しとれ。

 それと赤也、もしアイスの食い過ぎでハゲたら、ワカメでも被っときんしゃい。


(きっとバレんよ)