梅雨が開けたあとの、真夏日が照りつける蒸し暑いその日。七松小平太と立花仙蔵は、六年長屋の縁側でだらけるように寝転がっていた。
額に浮かぶ汗の珠はぬぐってもぬぐってもキリがなく、不愉快と不快感に顔を歪めることさえしたくない。
指一本動かしたくないというのに、隣に同じように伸びていた小平太が不意に起き上がり、仙蔵の頬を撫でた。それを鬱陶しそうに払い、やめろと小さく呟く。それだけでかなりの体力が消耗されたように思えた。


「仙ちゃん、どうしよう。暑くてムラムラしてきたよ」

「今始めたら爆発させるぞ」


そう言ってあしらうが尚も体をまさぐる手は熱く、内側から熱がせりあがるようであった。
軽く頭(かぶり)を振るがお構いなしに唇を重ね、服をはだけさせる。胸を押し返せば、煩わしそうに頭上で一つに纏められて押さえられた。


「……仙ちゃんはさ、一年の頃人一倍警戒心が強くてあまり私たちと関わろうとしなかったでしょ?」

「小平太……?」


怪訝に眉を寄せるが、額に唇を当てられるだけで終わった。
至るところに口付けを落としながら、語る語調を緩めない。


「文次郎とは気が合わなかったみたいで喧嘩ばかりしていて、でも初めて話したのは文次郎だった。伊作は人当たりがいいから仙蔵にとって初めての友達で、最初に笑いかけたのは長次だった。泣いている留三郎の手を引いてあげて、初めて手を繋いだのは留三郎」


首筋に舌を這わせ、低く声を出しながら言う。
震える唇にさえも甘い吐息がでてしまいそうで、懸命に唇を引き結んでは堪えていた。
そんな仙蔵に優しく微笑みかける。


「だから、ねえ。私にも仙蔵の初めてをちょうだい?」

「こへ……ん、」


落ちてきた唇は最初はただ重ねるだけの味気ないもので、しかし次第に深く舌を絡めていく。
頭の中ではダメだとわかっていても、小平太の視線に囚われるとこのままでいたいという願望が強く出てしまう。
解放されたばかりの力の入らない腕を無理に動かし、小平太の首に絡めた。
今はすべてこの暑さのせいにして、この身を委ねてしまいたい。





 

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