*央ちゃん宅の乃衣ちゃんをお借りさせて頂いています。
「……はあ、」
一体この短時間で何度ため息を繰り返したんだろうか。ため息を吐き出した瞬間ふわっと白い吐息が漏れた。寒いから家に帰りたいんだけど、それはそうもいかないようで。
また、一つ春はため息を吐き出した。すっかり暗くなってしまったこの世界は春が身に纏う死覇装と同化したようだった。
「あ、サボリしてるでしょ」
突如ぽつり、と暗闇から声が発せられた。声からして女か、と春は呑気にも声が発せられた場所をただただ見て、一向に斬魄刀に手を伸ばす気配すらない。
「…斬魄刀も抜かないなんて、サボリにもほどがあるでしょ?」
こつこつ、と足音を鳴らし暗闇から現れたのは制服を身に纏った女に春は目を細めた。茶色にピンク色を混ぜたような長い髪に右目は隠されその飄々とした表情、そして何より自分が見えるとなればそれはそれで普通の"人"ではない。
「…誰だ、あんた」
「あれ、知らない?某は市原乃衣、死神代行の補佐係の十番隊所属の死神」
飄々とした表情を一切変えずに口にした言葉に春は何処か聞き覚えがあった。十番隊所属の市原乃衣、確か此処に来る前に資料やらを見せられたはずだ。
「五番隊所属の早瀬春、死神代行の補佐お疲れ様です」
「ほんっと、棒読みね?」
そう口にすると共に先ほどと打って変わりまるで子供のような表情で笑い出す目の前の彼女に春は内心びくり、と揺れた。
飄々とした表情から子供のような表情へと一変した彼女から先ほどのような飄々とした表情が感じられない。まるで、別人のように変わったのだ。
ひとしきり笑い終えた乃衣は改めて春を目にした。黒髪に千草色をした目、そしてあの表情に乃衣は噂通りだわ、と内心笑みを浮かべた。
「あなた尸魂界でも有名だったわよ、雑用係の早瀬春」
なのに、虚退治なんて雑用係から卒業したの?と口を開けば春は千草色の目を細めゆっくりと口を開く。
「…虚退治なんて、本当はしたくないのですが隊長がどうしてもと仰ったので」
"隊長"と口にしながら春は自分の上司を思い出した。五番隊隊長の藍染惣右介、優しく真面目な性格だと通っているが本性は残後極まりない。何やら企みもあるのだろうが他に教える気にもなれない、
「…藍染隊長、か」
まるで、呟くように口にした乃衣に春は目を細めた。何やら意味ありげに口を開いた彼女はもしかしたら藍染の企みに気付いているのかもしれない。別に知られて自分が困ることはないがどう言った形跡で彼女が藍染の企みに気付いたのか知りたかった。
暫しの無言の中、まるで何も無かったかのように笑みを浮かべると乃衣は口を開いた。
「藍染隊長、優しいからね」
春が乃衣のその笑みが何かを楽しむようなものに見えた瞬間だった。
end
暗闇に埋もれた空
* * * *
本当に申し訳ない。乃衣ちゃんが"誰だよ、お前"的なことになってしまっている。
スランプかもしれない。取りあえず央ちゃんに春共々に殴られます。はい。
では、央ちゃんありがとうございました!