*真昼ちゃん宅のスピカちゃんをお借りさせて頂いてます。





「…ほんま、あかんわ」

「…え、ちょっと…」

くわあっ、と呑気に欠伸をしては意識此処に在らず状態を続けるナトにスピカは大きなため息を漏らした。どうして、この人はこうも自分勝手なんだろうかと考えるスピカ

だが、今更そんな事を考えようとも答えは満足に出ない。またしてもため息を吐き出したスピカをナトは横目で見ていた。



「…こないな場所で二週間もおったら、頭可笑しくなりそーやわ」

「…仕方ないでしょう、医師の方が二週間安静にって言ったんですから」


ことの発端は二日前の雪山での出来事だった。二人共、あの雪山で死にかけのところを何とか手持ち達が人を呼び一命を取り留めた。手持ち達に怪我などは全く見当たらないが、二人は怪我などを含め全治二週間で入院することになった。



「…暇になるなァ、」


でも、スピカと同室やから、と口にしへらりとナトは笑った。それにスピカは顔を歪ませたが、それが分かっていたナトはスピカの表情にまたしても、満足げに笑みを浮かべた。


「…あなたも私も、死にかけていたんですよ、」

「……そうやね」

「…なんで、…そんなっ」


ぽつり、と呟きにも聞こえる声でスピカが口にした。それに、返事を返せば納得出来ないのかスピカは悔しそうに真っ白なシーツを握り締め唇を噛み締めた。


「…生きてたんやから良いと思うんやけどなァ」


「……」


どうして、そう客観的な考えなのだろうか。へらり、と笑うナトにスピカは疑問を抱き、そして歯痒くて仕方なくなる。もしかしたら、あの時死んでいたのかもしれないと言うのに。


「…スピカ、?」

「……」


無言のスピカに、どうしたのかと目をやれば相変わらず目を下に伏せ唇を噛み締めているスピカにナトは苦笑いを浮かべた。どうして、そう物事を深く考えてしまうのか?ナトには分からなかった。



「…いつか、スピカが目見えたら僕のとこ見せに来るんやで」

「……え、」

「約束したやろ?スピカが目見えたら僕の眼帯ん中見せたるって」

"忘れたん?"と口にすれば、"冗談だと思っていました"と口にしたスピカに苦笑いを浮かべる。

「…失礼やなァ、冗談ちゃうよ」

「……なら、必ず目が見えたら見に行きます。」

「…見えたら、なんやけどな」


またしても、スピカに嫌みに近い言葉を口にしてはスピカの様子を伺う。顔を歪めて自分を睨んでくるだろうと予測する。そして、その予測が当たる。それが、ナトには楽しくて仕方なかったのだ。


「…見えますから、だからあなたも死なないで下さいよ」

"見に行けなくなるので"と何時もとは違う表情や言葉に思わず唖然としたナトを知ってか知らずかスピカはうっすら笑みを浮かべた。

「…そう、やね。僕が死んだら意味無いんやったっけ」


やっと出た言葉は情けなく思わず笑みがこぼれた。何故自分がまだ知り合って少ししか経っていない相手に動揺するのだと笑みが止まらない。

「だから、死なないで下さいね」

「…はは。まあ、死なんように頑張るわ」

本当にどうしたのか、と自分に問い詰めたが答えすらも出ず、知らず内に窓へと向けていた目線をゆっくりとスピカに戻せば何時も思う、紫色の宝石のような目が自分の目線へと入った。それは、酷く綺麗で呑み込まれそうな感覚へと墜ちたのだった。



子守歌を奏でる






* * * *

真昼ちゃんから貰ったお話の一応続きですが、やっぱりスランプみたいですね…。

取りあえず、スピカちゃんにナトが唖然とする言葉を口にして欲しかった。俺得過ぎて申し訳ない…

真昼ちゃん、ありがとうございました!
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