*真昼さん宅のスピカちゃんをお借りさせて頂いてます







「………」

器用にも木の上で寝転がっていれば呑気にも大きな欠伸を白髪の少年はする。―――余程眠いのか深い青色をした瞳は閉じられようとしていた。


「―――――ねぇ、」

だが、次の瞬間最近聞き慣れた声が少年の耳へと届いた。


「……どーしたんー?スピカ」


何時もの胡散臭い笑みを浮かべスピカへと顔を向ける。自分がいくら笑みを浮かべたとしてもスピカには見えないがこれは自分の一つの癖である。

「……あ、貴方が私の好きな音楽のCDを隠すから来たんです」

自身の癖に嘲笑いながらもスピカを見れば彼女はやはり機嫌が悪い様子。その宝石のような綺麗な紫色をした瞳がナトを写す。

「…へぇ、やっぱりCD無かったん?」

自身で隠しておきながらもしらばっくれて笑みを含んだ声でスピカに問えばさらに彼女はむっと顔を歪ませた。



「……返して下さい」

はっきりと言ったが彼、ナトからはクスクスと小さな笑い声しか聞こえない。聞こえなかったのか?いや、彼が聞こえなかった筈がない。

「もう一度言います、返して下さい。」

ぴしゃり、と言い切った言葉に少しの怒りを込めて言えば彼からは呑気な声で"ごめんなァ"と謝られながら手にCDを握らされた。

一体、いつの間にか木から降り私に近付いたのだろうかと内心パニックになりそうになりながら"ありがとうございます"とCDを持つ手を引っ込めようとしたが叶わなかった。




―――――――グイッ


「………っな、」

「…あれ?どないしたん?」


木から降り彼女の手にCDを握らせ手を引っ込めようとする彼女より先に僕は彼女の腕を掴み自分へと引き寄せれば案の定な反応。


「……離して下さい。怒りますよ…」

一瞬固まりはしたがすぐに離れようと僕を押し返す腕を無視し僕はゆっくりと口を開いた。


「………なァ、スピカの旅て長い?」

「……はい。長いです」

「やんなァ、先が見えん旅やもんなァ」

「…何が言いたいんですか?」

「別にー?」

にこり、と笑えば彼女は僕の胸を勢い良く押し必然的に僕と彼女の距離は離れた。


「……では、次は私から質問です。」

「なにー?」

「…その、眼帯どうして付けているんですか?」

そう言って指差されたのは僕の片方の目を隠す黒い眼帯。ほんまに彼女は勘がいいと言うか何と言うか……

そっと自分の眼帯へと手をやれば感じる感触。スピカは僕の行動を不思議そうに眺めてる。


「…さァ、何でやろうね」

「…はぐらかさないで下さい」

「はぐらかしてないで?僕にもわかれへん」

へらり、と笑って答えれば驚いたように少し目を見開くスピカ。嗚呼、ほんまに楽しい

「…じゃあ、なんで……」

「スピカと一緒。」

「……え、」

「嘘。嘘やでー」


"一緒"そう言えば先ほどより驚いたような彼女に嘘だと明かせばむっとまた顔を歪ませ"からかわないで下さい"とキツく言われる。

それを謝りながらいればふ、と自分の中に良い考えが思い浮かび笑みが漏れた。


「……まァ、スピカが目見えるよーになったら見せたる」

「…え、眼帯の中をですか?」

「見えたらの話やけど。」

「何時か必ず見えます。」

「…へぇ、自信満々やね。」


逞しいわァ、とからかうようにナトが笑えばスピカはナトを睨み付ける。そんなスピカに気付いても尚ナトは気付いてないように笑うのだった。


やさしいまぼろし


end

* * * *

意味のわからない終わり方に偽スピカちゃんですみませんんんんん!!

いや、何と言うか攻めきれてないですね。すみません。

ナトがスピカちゃんに悪戯して怒りそうなスピカちゃんに何故か眼帯内を見せてあげると口にするナトみたいなお話です。

では、真昼ちゃん本当に有難う御座いました。
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