*ユキちゃん宅のハクアちゃんお借りさせて頂いてます。





は、と彼女が吐き出した息は真っ白だ。…手が悴むのか、両手はポケットへと突っ込み少しながらの暖を取るようす。だがそれはほんのちょっとであって、とても暖かいなんて言えるものじゃない。首に巻いたマフラーに顔を半分埋めてその真っ白な景色へと目を移す彼女の髪もまた汚れのない綺麗な真っ白だった。

寒いな、と白い息を吐き出しながら一言漏らした彼女だがこの場から動こうとはせず只この真っ白な景色を見つめているだけ…だが、さて本当に彼女はその景色を見ているのだろうか、切なげに細められた瞳の心境は彼女にしか分からない。



「…あら、先着おったわ」

「……、!」

ビクリ、と彼女の肩が少し揺れたものの声の主へと目を向けたその次の瞬間には既に表情からは何も伺えない。何を考えているのか、何を思っているのか、誰が見ても一欠片も彼女の表情からは何も分からない。

その振り返った彼女は冷静に目の前の人間を警戒する。見た目はどうも同性が異性なのか分からない点が多々見つかるが声からして異性なのがよく分かる、だがそれよりも彼女が気になったのは、


「…真っ白、だね。あなた」

「君こそ、よーこの景色に似合っとるよ」

彼が口にした言葉は誰もが思うことだった。この真っ白な雪景色にただ独り、ぽつんと佇まる彼女はまるで絵に描いたかのよう、だがそこに暖かなものなど何もなく景色にとても似合った淋しさが描かれたかのような絵。

嫌みなの?、と彼女は無表情で彼に問う。少女、特有の幼い顔立ちからはとても似つかない表情に"何かある"と確信を掴んだ少年はへらり、と虚飾とも取れるような笑みを貼り、さあ?と曖昧な言葉を返した。

「…君、名前は?」

「私は得体の知れない人間に名前を晒すつもりはないよ」

「はは、堅いなァ…」


仮にも断られた筈なのに対し彼はへらりとまた胡散臭い笑みを浮かべた。それを横目に彼女は雪景色へと目をやっていたが突如、足元で何かが動いたのが目に入り足元へとゆっくりと視線を落としては、"またか"とため息をついた少女。足元にはユキワラシが二匹彼女の足元にぴたりとくっ付いている。


「…懐かれ体質、」

「……!」

ぽつりと少女にも聴こえるくらいの声で、少年は呟いた。そうすれば、案の定少女は先程まで少年から背けていた顔を即座に此方に向けられた。細められてた瞳は驚愕と不安、そういったような感情を秘めさせ見開かれている。少年は口角を妖しく上げた。


「…何が、言いたいの」

「別に、ないで?」

僕にも君と似たような子と知り合いやから。と少年は笑みを貼り付けたまま口にする。少女の警戒は弱まるどころか強くなっていた、…それを知ってか知らずか少年はもう一度、少女に名前を問い詰める。それに諦めたのか少女は一つため息を吐き出し、ゆっくりと口を開く。


「…ハクア、」

「ハクアちゃん、可愛らしい名前やね。君にぴったりや」

「……あなたは」


「得体の分からんよーな子に名前教える気はないなァ…」

「…な、っ」

少年の言葉にハクアは声が出なかったがそれはすぐさま、冗談だと笑う少年に呆れさせられる。へらへらと笑う少年はただ一言、"ナト"と口にした。一方先程まで感情が全く分からなかったハクアが此処まで表情ころころと変えるそれにナト自身愉しくて仕方ない。ハクアの足元で此方の会話を聴いているユキワラシは意味が分からない様子で小さく鳴いた。

「懐かれ体質も大変やなァ」

「……まあ、」

「特殊体質やなんて、」

何か理由あるん?とナトは静かにハクアへと問う。一見端から見れば普通に聞いているかのように思えたそれだが、ハクアはナトが何かしらの確信を抱きながら自身な問うて来たことが分かった。それを躱すかのようにハクアはさあ?、と先程ナトが使った曖昧な言葉を返す、



「あなたも何かあるんじゃない?」

その目、とか。ハクアが口を開き指差す先は黒い眼帯。それにナトは見てみる?、と一言ハクアに笑みを浮かべながら口にする。見せることもないくせに、心中で口にしてはため息を吐き出そうとした瞬間だ。


「…なに、」

ハクアの左頬へと置かれた手にハクアは冷静に言葉を吐き出す。戸惑う仕草など全く見せない少女に少し内心で驚かせられるもののそれよりも笑みが零れる、綺麗な汚れのない瞳がナトを写す。

「…別に?」

へらり、と笑うナトと逆にまるで、死んでいるかのような冷たさの手にハクアは顔を歪める。生きているか、疑いたくなるほどの。下手したら体温が全て引き寄せられてしまうかもしれないと無いことが脳裏を横切る。

それを馬鹿げた考えだ、と吐き出すようにしてハクアは笑みを浮かべた。


白雪に舞う

end


* * * * *

ユキちゃん誕生日おめでとう!駄文過ぎるのとハクアちゃんを上手く書けなくて本当にすまない。が本当書いていて楽しかったです!ありがとうございました!!!!
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