此処もすっかり肌寒くなってしまったが、それはそれでまた良いものでもあり着々と年の終わりを感じさせるものだった。久しぶりだ、と目を細め笑みを浮かべた彼女のその青い瞳は何故だか少し何処か寂しそうだ。理由は全ては分からないが、大体は分かったような気がした。



「久しぶりなんだろ?」

「…は、…うん、凄く」

タメ口に慣れない様子で苦笑いを浮かべた。それに気付かないように彼女の腕を引っ張れば驚いたような表情を見せる。それに向かってにこりと笑えば意味の分からないようで躊躇いがちに首を傾げたのだ。



「此処、覚えあるか?」

「……あ、」

此処、と指を指す方向は何もないマサラの外れの野原だがカナデは気付いたように小さく声を上げて野原に向けていた顔を此方へと向けた。それに俺は小さくだが頷けば、うっすらとたが笑みを浮かべたのだ。


「…此処も懐かしい、」

端からすれば、只の何もない野原なのだが俺とカナデにしたらとても大切な場所なんだ。そう、始まりの場所とも言えるのだろうか?酷く懐かしい記憶が二人して思い出されたような気がし、それも遥か昔のように感じられた。


「…だいぶ経つよな、」

「…一年、だったかな…」

「カナデと出逢って一年経ったのか…、あの頃は訳が分からないって感じだったよな」


あの時のカナデを思い出し、笑いながら口にすれば困ったように苦笑し"仕方ないですよ"と言葉を発した。確かにあれは仕方ないと言うのか、後からよくよく聞けばどうやらカナデは違う世界からやって来たらしい。詳しいことはよくわからないが、きっと知らない世界で知らない場所で戸惑っていたんだろう。きっと、俺だって一緒だ。


「…悪い、」

「……え?」

突然の謝罪だからだろう、カナデはその水色をした宝石のような瞳を見開いた。それを横目に情けなく苦笑し、その野原へと腰を降ろせばカナデもそれに続き腰をゆっくりと降ろした。

「…辛いこと思い出させてしまった。本当は、」

その先の言葉はどうしても口に出来なくて、笑って誤魔化す。"帰りたい"と思うことだなんて当たり前のことじゃないかと内心で語れば語るほどそれは凄く寂しくて、情けないと分かっていながらもこの気持ちを抑えきることは出来なかった。不安げに此方を見つめるカナデが横目に入る。


「…キアさん、」




「誕生日おめでとう、!」

「…………え、?」

しん、と静まり返ったこの場で瞬間声を上げた。そうすれば意味が分からないと言いたげなカナデが目をぱちくりとさせている、それがどうしようもなく面白くて笑いが込み上げた。


「…ははっ、なんだその顔」

「……え、今…え、?」

「誕生日おめでとう、カナデ」


未だに混乱状態のカナデに向かって、ものを突き出せばはっとしたようにカナデの身体が止まった。"くだらないものだけど"そう口にすれば言葉ではなくゆっくりと横に顔を振ったカナデは恐る恐ると俺が突き出したものを受け取った。

「…あの、これって…」

「カナデの気持ち知ってながらさ、」

「……」

「何も出来ない俺を憎んでくれ。でも、どうか今は少しでもこの世界を楽しんでくれよ」

カナデが帰る術は俺も分からない。きっと、寂しいのはカナデだって一緒な筈だ、カナデと出逢えたことを後悔しているわけじゃないがどうして、こんなことが起きてしまったのか。運命と言うならば酷いものだと思った。誰もを憎むことが出来ないのなら、せめて俺を憎んで欲しいと無理だと口にされることを分かっていながらもそう思ったのだ、そして少しでもこの世界を楽しんで欲しいと願った。


「…開けても、良いかな?」

「…勿論、!」

俺の言葉にカナデはゆっくりと真っ赤なリボンを解いてゆく、慣れないことをしたなーっと目の前のカナデを目にし小さく苦笑を浮かべる。そうしている間にも綺麗にリボンは解かれ中からは淡い青色の光がキラリ、と瞬いた。

「…これ、」

「合うか分からないけど、カナデにぴったりだなって思ってさ。」

カナデの手の平には小さな青い硝子が散りばめられた指輪。やはりこれにして良かったと改めて感じられた。お揃いとにこりと笑い片手を上げれば、その指輪と似た色違いの指輪がカナデの目に入った。

「おめでとう、カナデ。俺と出逢ってくれてありがとう」

うっすらとだが笑みを浮かべたカナデのその青い瞳にはもう寂しさが見えなくなったような気がした。


end

happy birthday カナデちゃん!!ぐだくだ感満載でしたが、本当にありがとうございました!これからもカナデちゃんとキアのコンビ(?)が見られたら嬉しいです!夢羽宅のカナデちゃんお借りさせて頂きました。ありがとうございます!

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