・真昼ちゃん宅のスピカちゃんお借りさせて頂いてます。
それは、とても酷い話だ。
薄暗い路地裏で蹲るようにしている一人の少女。身体中は至る所に傷が付き、弱りきっていることは誰が見ても分かることだった。
だが、彼女は其処から動こうとはしない。只、蹲るようにしているだけである。
「いい加減、止めたら?」
そこに、似合わない声が少女の耳を掠めるものの少女は顔を上げることも返事を返すこともせずに、ただ服にあった拳の力が込められる。
その姿に呆れたようにため息を吐いた声の主である少年は、少女へと徐々に距離を縮め始める。そんな中で少女は、蹲る身体を更に小さく蹲り頑なに閉じていた口をゆっくりと開いたのだ。
「…放って、おいて…」
発せられた少年を拒絶する言葉は酷く小さく震えていた。が、少年には聞き取れたようで、またしても小さくため息を吐き出したかと思えば、少女の言葉などまるで聴こえていなかったように歩を進め少女のすぐ傍へと距離を詰め腰を下ろす。
「結局、何も変えられへんかったんやろ?」
君の未来も運命も、その盲目さえも…。そう腰を下ろした瞬間から淡々と喋る少年に最初は耐えていた少女も、次第に少年の数々の言葉に耐えきれなくなったのか突如、勢い良くその伏せていた顔を上げて、その見えない目で静かに少年を睨み付けたのだ。
「…ふざけないで!私のこと何も知らない癖にどうして、そんなことが…言えるの?」
まるで怒りに全てを任せるかのように、少女は今にも少年に飛びかかるかのように声を張り上げる。――けれども、少年は表情を変えることもなく、少女のその声を張り上げる姿を只何も言わず見ているだけだ。そんな少年の態度に少女の怒りは何故かへ行ってしまい、代わりに疑問が少女を埋め尽くした。
どうして、?呟くようにして少女は言った。――どうして、何も言ってくれないの?少女の…スピカの知る上での少年、ナトはこんな無様に叫ぶ他人を嗤わない訳がない。彼は酷いのだ、優しさなど欠片一つも有りはしない。……もしかすると、嗤えないほど何も言えないほど今の私は無様なのだろうか?
そう考えが脳裏を過ぎった瞬間少女は脱力感を感じた。
何時の間にか上げた顔はゆっくりと下げられ、拳は自身の服を握り締める。どれだけ捜しても少女の願いを叶えるものは見付からない、幾度となく少女はあらゆる場所を渡り歩いた。だが見付からないのだ、これだけ傷付いて苦しんでも、何も見付からない。
「…駄目なんですよ、もう」
「……」
"きっと、目なんて一生視えないんだ。"
片言のように吐き出された言葉は、少年の耳に確かに聴き届いていた。虚ろな目の少女は人形のようにして、只その言葉を自身に向けた言葉のように繰り返している。その様子をただ傍観していただけの少年は突然、何を思ったのか…ぐいっと少女のか細い手首を掴み取った。
「…っ、何を…」
「……」
突然のことに驚く少女を無理矢理立ち上がらせて、少年は少女の有無など聞き耳を立てずにして軽々と抱き上げてしまい、歩き出す。少年の行動に仰天で暫く固まっていた少女も次第に我に帰り離せともがく。が、ビクともしない腕は少女の力など感じていないようだった。
「…いい加減にして下さい、私なんか放っておいて」
「それは出来へん話やなァ。折角君のこと面白かったのに、此処でお終いやなんて」
"酷い話なんとちゃう?"と抱き上げている少女にへらりと嗤う少年。酷い話はどちらだと怒鳴ってやりたくもなったスピカは此方を見て未だ嗤っているであろう少年を又しても睨み付けた。
「ふざけないで、私は貴方の玩具じゃない…」
「…へえ、?ずっと玩具みたいな表情してて、よーそないなこと言えるんやね」
「…っ、ずっとだなんて貴方には分からないでしょう!私のこと何も…!」
「知っとるよ、」
吐き出すようにして接げられていた少女の言葉が少年のその一言にぴたりと止まる。どういうことなのか、もしかしたら又只の意地悪で言ったのか、少女には何も解らなかった。
一方、少年はというと少女の驚愕した表情に満足を得ていた。そして、言葉が出ない少女に更なる追い討ちを掛けようと密かに笑みを浮かべる。
「…なして何不自由なく暮らせてた君が、こないな所に来たん?」
「……え、」
「可愛らしい服着せてもろて、美味しいもん食べて、苦労なんて無縁のようなお嬢様が、遊びにでもきて迷子になった?」
「…私は、人形じゃない。私は遊びになんて来たんじゃない。…私は、捜しに来たのよ」
少女の言葉に虚ろだった瞳が溜まった涙を必死に止めて、光を求めていた。昔とはまた少し違っていたものだと少年は内心で言葉を漏らす。少年の中にあるあの日の少女の表情はまるで、死んだような悲惨さを出していたのだ。それが今、必死に光を求めている。
「…酷いなァ、世界は」
「……酷い、?」
「そやで、君が此だけ必死に捜してる言うのに世界は君に何か返してくれた?」
「…そ、れは」
「君が世界に費やした時間、それを代価にしても何も返って来うへん。理不尽やね…?」
「……」
「だったら、一層君が全て壊して終えば良いんとちゃう?」
へらりと笑う少年は抱き上げていた少女の耳元へ囁く。世界が応えてくれないのなら、一層応えてくれるまで壊してみようと。少女に罪はなくこれは世界に罪があると、呟いた。
世界に別れを告げる
end
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真昼ちゃん改めまして誕生日おめでとう御座います!真昼ちゃんには何時も萌えを頂いております。つまらない駄文ですがどうぞ!精一杯の私の愛です!←
久しぶりのナトスピに凄く萌えを感じさせて頂きそして見え隠れ(?)しております、ナトが言う"あの日"なのですがスピカちゃんはホウエンのお嬢様でナトは腐ってもジョウトの良いとこ生まれなので幼い頃パーティーなどで出逢っていたら良いなあと言うか、一方的にナトが幼いスピカちゃんを覚えていたのです!という訳の分からない説明で申し訳ないです。
ではでは、真昼ちゃん本当におめでとう御座います!