*真昼ちゃん宅のスピカちゃんお借りさせて頂きしました。
「なあなあ、ちょっと!」
大きな声が響く。それは明らか聞き覚えのある声であって自分に向けられたものだと思ったスピカは進む足を止めてゆっくりと振り向いた。
「……ナ、トくん…?」
「…え?」
スピカは見覚えのある声に、驚きのあまりその声の主の名前を発したが声は震えていた。けども、目の前の人物にはちゃんと聞こえていたようで、またその目の前の人物も目を見開いていた。
「…なあ、今"ナト"って…」
「え、あ…ナトくんじゃない」
よく聞けば、その声は少しナトが持つ子供っぽい声から大人っぽい声であり、また口調も違っていたことにスピカは即座にナトに似てるが別人だと言うことが理解出来、慌てて修正するように口を開けば目の前の人物にがっと勢い良く肩を掴まれた。
「…なあ、ナトって…!」
「…ちょ、いたっ…」
勢い良く掴んでしまったトキより小さな人物は痛みに顔を歪めて、それが見えた瞬間すぐさま手を離し"やってしまった"とばつが悪そうな表情を浮かべたトキは気持ちを落ち着かせてはゆっくりと口を開いた。
「俺、トキ言うんやけど…兄さんの知り合いなん?」
「…トキくん、ですか。私はスピカです。あの、お兄さんとはまさか…」
"ナトくんのことですか?"と透き通った声がトキの耳を掠めた。それに"ナト"と言う名前を発した目の前のスピカと言う人物は自分の兄の知り合いなんだとトキは確信した。
行方知れずの兄の知り合い、を思わぬ場所で見つけたトキは内心とても嬉しくてすぐさまその兄の居場所をスピカに問う。がスピカは謝罪をして"知りません"とぽつりと呟いた。
「…そう、なんや…」
「すみません…」
「あ、謝らんといてや!」
少しだがしゅんとしたスピカに慌てて口を開く。自然と熱くなる顔を抑えるがどうも止まる様子はなく、トキは小さくため息を吐く。兄にはあって自分にはないものの一つとして挙げられるのはこの女子扱いに慣れていないということであった。
昔から兄であるナトは何もしていないと言うのに女子には好かれまたナト自身も女子の扱いは上手かった。一方、トキは努力を重ね人付き合いも上手くなり兄よりも社交的であると評されはしたが女子の扱いは上手くはなかった。
「…ナトくんとは兄弟なんですか?」
「あ、そやで…兄弟で双子」
目の前のスピカに戸惑いながら返事を返せば、"似てますね"とスピカは珍しいものを見るように口を開いた。
「声は似てるけど、性格とか真逆なんですね」
「良く言われたわ、」
はは、と苦笑いを浮かべたトキはスピカを改めて目にする。綺麗な髪と品があるような態度や容姿に何より、その宝石を入れているような神秘的な紫色の瞳にトキはとても興味をそそられた。自分の兄はどのような経路でこのスピカと出逢ったのか、
「…あ、スピカちゃんはこんなところで何してたん?」
「私、旅をしているんです」
「…え、旅?なんで?」
旅をしていると口にしたスピカにトキの中に疑問生まれスピカに問うが何故か黙ってしまうスピカにトキは何か地雷を踏んでしまったと後悔し、慌てて謝罪する。
「…あ、ごめんな!」
「あ、いえ、大丈夫です」
「いや、もうほんまに――」
謝罪を繰り返す中でトキはぴたりとスピカに目をやりながら止まった。それにスピカはどうしたものかと首を傾げた、その途端"もしかして"とゆっくりトキは口を開いた。
「――目、視えへんの?」
「………なっ、」
その声は余りにもナトに似ていて、スピカは息を呑んだ。図星を点かれたことにより言葉が出ないスピカに"当たったのか"とトキは内心で思い、その宝石なような綺麗な瞳には既に光が無かったことに悲しい気持ちが渦巻いた。
「……ごめん、」
「…大丈夫、です」
一体光が無い世界とはどんなものだろうか、と考えたトキだが答えなど見つかる筈もない。だが、とても淋しいんだろうと空想を思い描いたトキは今、目の前で暗くなるスピカにどうしたら良いのか判らなかった。だから、判らないからトキは自分なりにゆっくりと手を伸ばした。
「……ト、キくん?」
「きっと大丈夫、やで」
ぽんぽん、と慣れない手つきでスピカの頭を撫でたトキは顔を赤くしながら口にした。一方、スピカはと言うと驚きできょとんとした表情を浮かべる。
"きっと、大丈夫"そう口にしたものの何が大丈夫なのか判らないトキだが、"きっと、目が視えるようになる"とは口にしなかった。それはやはり視えるものかは難しく可能性は低いと考えたからである、だが無理とも言えない。だから、せめてもの願いを込めてみた。
「…ありがとう、」
その込めた願いでスピカに光が与えられたとしたらどんなに良いことか。"ありがとう"とうっすらと笑みを浮かべたスピカに無力であるトキは少し救われたような気がした。
奏でたのは違う音色
end
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トキの初めてのコラボにスピカちゃんをお借りさせて頂きました!
なんだか、もう意味が分からない話になってしまって申し訳ないです。
では、ありがとうございました!