*真昼ちゃん宅のスピカちゃんをお借りさせて頂いてます。
ちょっと危ないお話です




「………」

二人が入院してからちょっと経ったが相変わらず暇なのは変わりなく、ぼーっと暗くなった空を見ていたナトはため息を吐き出した。

暇、なのは気に食わないがそれよりも気に食わないのがあの時スピカに動揺した自分だった。あんな事でいろんなものが揺らぐなんて自分らしくなくて、

考えても、考えてもあの時自分が動揺したことは事実で、次あの時のようなことがあれば自分を失いそうだった。もしかしたら、自分はスピカに心の何処かで信用に似た感情を抱いているかもしれない。そんな考えがナトの頭を埋め尽くしていくのだった。



「……スピカ、」

「…はい?」

ナトは不意に、ぽつりと隣のベッドで寝るスピカを呼ぶ。返事を返したスピカだがナトから言葉が返っては来ずどうしたのだろうか、と疑問におもったスピカはベッドから降り自分の周りを覆うカーテンを開きナトのベッドまで手探りで近付いた。

近付いた、と言っても同室でしかも隣同士のため時間など掛からない。ひんやりとした冷たさが地面からスピカの足に伝うがそんな事気にも止めずナトのベッドを覆うカーテンの前で口を開く。

「…ナト、くん?」


だが、返ってきたのは無言だけでスピカは少し顔を歪ませた。人を呼んでおいて、返事をしないと言うことはどう言うことか。小さな苛立ちがスピカに生まれた。

それが、時間が経つ度に大きくなり遂にスピカは勢い良くカーテンを開いた。幸いこの部屋は六人同室部屋だが今はスピカとナトしか居らず周りを気にせずスピカは声を上げた。


「…一体、何だって言うんですか!呼んでおいて、自分は返事もしないで!」

勢い良く開いたカーテンから見えたのは布団を頭から被ったナトで、スピカの苛立ちは大きくなるばかりだ。声を上げたスピカにも無言を貫くナトにスピカは最後の手段とばかりに布団に手をやった、その瞬間。


「――っ!?」

布団から出てきたスピカとは、また別の腕が伸びてきてスピカの腕を掴むとそのまま中へと引きずる。突然のことに抵抗出来なかったスピカは突如背中に衝撃を感じた。

「……な、にを…」


ガタガタ、と震えるスピカは目が見えない為周りの状況がいまいち把握出来てはいない。だが、危険だと言うことは直感で感じられた。

そんなスピカを知って尚、笑みを浮かべスピカの上へと跨るナトの笑みは冷たく残酷で、


「…スピカは、ほんま阿呆やなァ」

「……ナ、ト…くん」

「……僕を信じてたん?僕が何もせぇへんって思てたん?」

冷たいナトの手がスピカの頬を撫でる。その瞬間まるで、撫でられた所から凍りついて行くような感覚に堕ちるスピカは恐怖で声が出なかった。

今目の前にいるナトは本当にナト、なのだろうか?そんな疑問がスピカの頭の中を巡っていた。これはナトじゃないかもしれない、声だけがナトであって自分が見えないから、本当は違う人なのかもしれない、


「…あなた、誰…?」

「…誰って、僕やで?」

「…違う、あなたはナトくんじゃない」

震える声で目の前の人物へと口を開けばクスクスと笑い出した。何が可笑しいのか、スピカには理解出来なかった。





「…ほんま、君は面白いわ」

笑いながらナトはスピカに口を開く。ナト自身この今の状況が愉しくて堪らなかった。スピカは今の自分を誰か別の人と見ている、自分がそんなことする筈ないと思っていたわけだ。

だが、そんなスピカの淡い期待さえも砕け散るようにナトはスピカの耳元へと口元を寄せ言葉を吐いた。


「……僕を信じた、君が悪いんよ?」

「――っ!」

途端にスピカは暴れ出しそれをナトは押さえつけながら、笑った。嗚呼、やっとこの子は僕やと分かったんか…でも、気付くのが少し遅れたみたいやね。


暴れまわるスピカは頭の中が真っ白で、ただ目の前の人物がナトだとわかった。その瞬間目から涙が溢れるのを感じながら必死に逃れる為に暴れた。だが、そんなスピカをいとも簡単に押さえつけるナトはスピカの頬に涙が伝うのが見えた。嗚呼、泣いてるのか、と頭の片隅で呟く。

「…そない暴れたら、何処か打つよ?じっとしとき?」

「…はな、して!離して!」


ナトの言葉に耳も傾けずスピカは暴れまわる。だが、かなわないのがやはり男女の差と言うもので、ナトはスピカの両手首を片手で上へと束ね動けぬようにすればスピカがぽつりと呟くように口を開いた。


「……ど、して…こんなこと!」

大粒の涙がスピカの頬を伝い真っ白なシーツへと流れ落ちてゆく。見えない筈の目は何故かナトを捉えていたのだ。

「…どうして?面白い事聞くなァ」

はは、っと空笑いをしたナトはゆっくりスピカの首筋へと顔を埋めた。あっ、とスピカの小さな声が耳を掠める。

「…僕の、勝手やん?」

「……っ、」

スピカの首筋へと顔を埋めながら口を開けばびくり、とスピカの身体は電気が走ったかのように揺れる。それすらも愉しいものの何ものでもないナトは首筋へと舌を這わす。

「……や、めてっ…」

スピカはただただナトに止めるよう口を開く。あまりの恐怖でガタガタと震え上手く呂律が回らない、そんなスピカにナトは何時ものようにへらりと笑うとスピカの衣服へと手をかけたのだった。


end

砕け散った硝子玉



* * * *

取りあえず真昼ちゃんに土下座して謝りたいと思います。もう、すみません。奴と共に私を殴って下さい。

…ちょっと、色々解説しますとナトがああやってしてしまった理由はスピカちゃんに嫌われて突き放して貰おうと私的に考えちゃったりしています。

が、結論的に奴は殴られるべきですよね。

では、真昼ちゃんありがとうございました!
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