俺的には凄く真剣に言った筈だった。なのに、奴は俺の言葉を聞けば数分もしない内にクスクスと肩を揺らして笑いだす。別に可笑しい話をした訳じゃない、この状況に助けを求めようとも誰も居ない。いや、ちゃんと言えば一人居るのだが宛にならないのだ。だが、まあ…一応声を掛けてみようかと儚い期待と共に太刀を研ぐ音の方へと目を向けた。
「レッド、お前からも何か言ってくれよ」
「…?」
「…いや、良いわ。悪かった」
俺の言葉にきょとんとするレッド。此処にはまともな奴が居ないのか。吐き出したい溜め息を何とか抑えていれば、"もう一回言うてくれへん?"なんて笑いを含んだ声が俺の耳に入る。
「だから、お前に今回のクエスト責任者になって欲しいって言ってんだよ。」
「それって、僕に他率いてクエストこなして来い言うてんの?」
「当たり前だろ、お前上位ハンターじゃねえか」
「雷狼獣やろ?」
単独行動を好む奴がこの先何を言いたいのかは言わずとも分かっていた。だが、ギルドでは言ってしまえば貴重な上位ハンターを下らないことで失いたくはない。汚いと承知しているが失うのなら上位ハンターだけは勘弁だ。言ってしまえば抜けた穴を埋めるのが結構困難だった。
「単独は許されないぞ」
「なら、他当たることやなァ」
「お前、仮にもギルドの人間だろ。ある程度の事は許してやってんだから今回ぐらいは、」
「グリーン」
「…、レッド」
ぽつり、と俺の言葉を止めるようにしてレッドが口を開く。何時もの無表情なレッドはナトへと顔を向ける、それに続きナトもまたレッドへと顔を向け両者が向き合う形となった。
「ナトなら、単独でもいける」
「おい、レッド!」
「決まりやね」
俺の言ったこと聞いてたか、とレッドへと問えばぽかんとした様子。一方、レッドの言葉を聞いたナトはへらりと笑う。こいつらには何時も振り回されてばかりだ。
*****
限界w