ばさり、と布の擦れる音が室内に響く。まだ眠たげな意識の中で上に白いコートを羽織り身なりを整えていれば、後ろから布が擦れる音が聞こえた。


「……ねえ、ナト…」

甘ったるいその声で名を呼ばれ吐き気に似た感覚に襲われながら、返事を返せば言葉では無く後ろから腰辺りに抱き付かれる。

「…どないしたん、甘えたさんやなァ」

本当なら此処で振り払うことも出来るが、そうはせずへらりとナトは笑ってその甘ったるい声を出す名も知らない女へと顔だけ振り返った。


「…もう、行くの?」

へらりと笑うナトに女は真っ白なシーツを身体に巻いて、不安そうにナトへと問いながら抱き締めていた腰の腕を変えナト首の項へと顔を埋めた。その瞬間ふわり、と匂う甘ったるい香り。

「…僕もやらなあかんことあるからなァ、」

「…えー、やだ…」

「…ほんま、甘えたさんなんやから。どないしたん?」


からかうように"まだ、足らへんの?"と妖しく笑えば女は顔を赤くする。それを知ってか知らずか、ナトは女の方向へと身体を向けてからもう一度問い掛ける。

「…まだ、足らへんの?」

「……そ、れは…」

ナトの言葉に顔を赤くして言葉を詰まらせる女の顎を掴み顔を近付ける。案の定、目を泳がせ混乱に陥った。

その反応に満足感を得る、これはほんのお遊びであってゲームであり本心なんて何処にもなかった。ほいほいと言葉を投げ掛ければいとも簡単にこのようなものが出来上がる。

「何も言わへんかったらわからへんやんか?」

へらり、と満足げに笑みを浮かべているナトは顎を掴んでいた手を離して、口にした。その言葉に女は言おうか言わまいか悩むように視線を落とす。だが、身体は正直だ。


「……た、りないの…」

ナトの服の裾をぎゅっと握り締め明らか見てわかる赤い顔でゆっくりと口を開いた。

「へえ、で?どないしたいん?」

くすくす、と笑いをこらえきれない様子でナトは女に問い詰める。だが、それ以上は口に出来ないようで女はナトに抱き付くような形で顔を埋めぽつり、と小さな声で呟いた。


「……あ、なたが…欲しい情報あげる…から」


その言葉の瞬間に勢い良く女を押し倒せば腹辺りに跨る。どうしてこう簡単に吐いてしまうのだろうか、ナトには分からないが便利なものには変わりない。利用出来るものを利用しなければ意味がない、例えそれがどんな形であれ…

「僕にこれ以上教えてええん?」

吐き出す言葉は判りきっているものの、聞きたくなってしまう。女の首筋へと顔を埋めながら口にすれば小さく声を漏らしだす。

「…い、いのっ…ナトの為よ」

「…へえ、僕のため?」

女がナトの背に腕を回しながら口にした言葉にナトはへらりと嗤う。僕のためと発したその口は、余程嘘が好きらしい。


本当に身体は正直だ、嘘も付かずただ本能のままに。身体に流され口すらも滑らしてしまう、最も簡単な自白術。



「…あ、っ…」

焦らすようにすればまるで縋るように抱き付く女は口を開いた。嗚呼、なんて呆気ないものなんやろうか?

所詮、気持ちだけでは護っていけるものなんてない、こうすれば気持ちなど脆く儚いものに過ぎない。

「…阿呆やなァ、ほんまに」


嗤いながらぽつり、と呟くように発した言葉は女には届かない。

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途中挫折しそうになったぬるい危ないもの。ぬるいのか…?取りあえず普段こんな奴です。成し遂げることがあれば犠牲すらも必要だと思っていたり、欲しい情報を得るのに一番手っ取り早いのはこの方法だったり。気持ちだけではどうにもならない、そんな感じで書いたんですが意味の分からないものになってしまった。
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