今日は講義を午前だけしかとっていなかったので、午後からは最近買ったゲームでもしてやろうかとうきうきしつつアパートへ帰った。

が、しかし。

目の前に広がる凄惨な光景と充満する異臭に、脳みそがそれを解釈するまで私はただただその場で立ち尽くすしかできなかった。




「おいこら不審者変態やろう」
「んっ──…名前ちんおかいりー」

ベッドに転がるでかい背中を踏めば必死に謝り許しを乞うわけでもなく、とろんとした目でへらりといつもの口調で振り返った紫原に名前はこいつを締め上げてやりたくなる衝動をぐっと堪えた。

「…何してんの?」
「名前ちんの部屋にいたら我慢できなくなっちゃって。」

去勢してやろうか。
大きな体を折り曲げて窮屈そうに私のベッドに横になる変態の手は自身の下半身に伸びており、あろうことかシーツには今しがた放ったと思われる精液が散っている。
なんてやつだ。
つい先日寝具を一新し、そして一昨日シーツ類を洗濯して布団を干して、しばらくは快適に眠れるだろうとほくほくしていたのにこの変態は一日もたたないうちに全てをぶちこわしがった。
しかもよくよく部屋を見渡してみればあちこちにお菓子のゴミや食べかすが散らかり、さらにはお菓子を食べた手であちこち触ったのかリモコンやガラスのテーブルには指紋がべったりとついている。
あり得ない。
それをしたのがたとえ私自身の彼氏であったとしても赦せん許さん赦すまじ絶対許せない。乙女の部屋を荒らした罪は重い。万死だ、万死。

「…さァて、躾のなってない変態にはお仕置きが必要だよね?」
「え?」
なにしてやろうか。
上着を脱ぎつつ仰向けになった紫原の上に跨がる。
不安そうな顔をする紫原だがその表情はどことなくこれからされることを期待しているようにも見える。
全く抵抗しないところを見ればその通りなのだろう。
股がったままずりずりと下がって、奴の股に下がるやたらでかいブツを根本から縛ってやろうと思ったが名前はふとひらめいた。

「ねえ、敦。男の人でも潮吹きって出来るんだって」

「……なにそれ」
「やってみよっか」

これをやるとシーツが大変なことになること必至だったが、そこにはもうべっとりと彼の放ったモノが散っていたので名前はもう完全にヤケになっていた。
まだ萎える気配のない紫原の大きなそれに手を這わせ、根本を押さえ込むように握れば彼は面白いくらいにびくりと体を跳ねさせる。
噂に聞いたそれは出るまでがとても辛いらしく(でも凄く気持ち良いらしい…)、さらに出来るか出来ないかはほとんどその時の運次第なのだそうだ。しかし名前は出なくても出るまで絶対に止めないつもりでいる。出るまでの間存分に地獄の苦しみを味わったらいいのだ。



「やっ、名前っ…もっと、」
「うるさい」

根本を抑えたまま亀頭だけを握り、手の柔らかい所でひたすらそこをぐりぐり回すように擦る。
根元は押さえるように握り込んでいるせいか、それが熱を増して徐々にびくんびくんと大きく脈打ってくるのがリアルに伝わってくる。だけれども、その刺激は紫原には物足りないらしく、もどかしそうに腰をゆらす。なんて変態。

「んんっ、……ふ、く」
「きもちーい?」

涙目になってこくこくとうなずく紫原に、名前の中の何かがザワリと蠢いた。
私より遥かに大きい彼を苛めて(いや、苛めてはいない。)興奮するなんてなぁなんてぼーっと考える。
人に「変態」なんて言っておきながら、自分も案外そっち側の人間なのかもしれない。認めないけども。
ぐちゅぐちゅと唾液を垂らし、それを塗り込むように強く扱き同時に指の腹で先の方を押し潰す。

「っく、ぁあっ、んんっ、ふ、はぁ…っ…名前っ」
「何?」
「なん、か…むずむずっ、する……っん」
「ふーん」
「……おしっこ、…んっ、したっ、い!」
「そっか、じゃもう少しかな」

なんだ、意外と簡単にできるんじゃない。
自然に閉じてくる紫原の脚を両足で左右に押し付けて大きく開かせた。そっけない返事しかしない名前に、紫原は潤んだ瞳で何か言いたげに見上げてくる。もちろんそんな視線には気付いてないフリなのだけれども。

「ぅあ、っん…く、ふ…名前っ、名前!…もー、やだやだっ」
「お仕置きなんだから駄目」
「も、しねーからっ…んん、ぁ……も、もれる!」
「我慢しなくていいよ」

ますます荒くなる呼吸と、まるで痙攣するかのようにびくついてきた紫原の身体。見たことがない彼の変化に少し可哀想になってきたけれど、手は休めずに赤黒く変色した先端に吸い付いた。

「ん、くぁあぁっ、やっ、名前っ…だ、め!」
「……………。」
「はッ、はッ、んんんっ…く、ふ、ぅう〜〜」
「え、何どしたの」
「っ、俺、おか…しくっ、なるっ!んぅ、…ぁくっ」

彼女が留守なのに彼女のベッドで自慰する時点で既にもうおかしいけどな。
ついに泣き出した紫原に向けて皮肉混じりに呟いた言葉は見事にスルーされて、不意に伸びてきた腕に手首を捕まれ驚いた。
でもその骨張った手にいつもの力強さはなく、少し降ればすとんと簡単に解けてしまいそうだ。

「敦」
「んーっ、ん、…は、はッ、…くぁ、ん」

駄目だ、聞こえてない。
ついに腰を浮かせ弓なりになり、ぼろぼろと涙を溢しながら強い刺激に身体を震わせる紫原の呼吸はとても短く不規則だ。
お仕置きにしてはやり過ぎた気がする。

「ふ、ぁあっ、あ、もれっ、や、やっ、だ、めっだめだめだめ!」
「もう出そう?」
「ぅ、は、ぁく、んんんんっ、やぁあぁああぁあっ!」
「わっ、」

一際大きく紫原の身体が跳ね、それと同時に堰を切ったように彼の先端部から透明な液体が勢いよく噴き出した。
びくん、びくん、と彼の動きに合わせて数度にわたり放たれたそれは精液とは違っていて、全て手で受け止めた私の手の内をさらさらと零れ落ちていく。

「ん、んっ…く、んぁ…ふ」
「うわぁ…」

尿特有の臭いも色もなくて、本当に潮吹きなんだ…と手をびちょびちょにした水のような液体を興味本意で舐めてみようとしたら、大きな手が私の腕を引いた。
案外強い力で引っ張られ、呆気なく私は紫原の胸元に引き上げられる。
ああー、服が汚れる…

「大丈夫?」
「はっ、……はぁ…っ、…」

呼吸を整えることにいっぱいいっぱいなのか、片腕を顔に乗せたまま動こうとしない紫原。落ち着くまでにはまだ時間がかかりそうだ。いくらベッドを汚された報復だからっていっても、これは少しやりすぎてしまったと思う。反省はしていないが。
下を見れば、私がいつも泣かされる絶倫な彼のそれは既にくたっと萎えていた。

「水持ってくるよ」
「……やだ」

紫原の尋常ではないくらいの汗の量と荒い呼吸にそれでも少し反省した私は、彼の目尻に伝った涙の跡を拭いそっと抜けだそうとしたらそれを拒まれ、まるで抱き枕を抱き込むようにぎゅうっと腕の中に綴じ込められてしまった。

「……ごめんね」
「何が」
「怒りに身を任せたとはいえ、流石にやり過ぎた。ごめん」

汗ばんで湿っぽくなっている広い背中に腕をまわす。

「ん。俺も、ごめんね」

片付けと洗濯手伝うし。
まだ熱の残る吐息混じりに甘えるようにすりすりと首筋にすり寄られ、くすぐったくて身をよじる。大きなシーツや掛け布団のカバーを私が一人で干すのはかなり骨が折れることだったから、非常にありがたい。

「………シャワーしなきゃ…」

布団も服も一気に洗濯してしまおうかな。
でも洗濯機小さいからなぁ。
3、4回に分けなきゃ駄目か。
なんてこの後の予定を色々考える私の肩口で、

「また今後さっきのしてよ」

とポソリと呟いたでかい変態の脳天に、さっき反省したことに猛烈に後悔した私の渾身のチョップが炸裂した





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