二週間に一回あるかないかの涼介さんのお休み。
普段忙しい分滅多にない休日くらいは一日家でゆっくりしていればいいのに、涼介さんは休みが決まったらすぐ私に報告をしてきて、そのたびに出かける予定を一緒に立てる。
端から見たらとても理想的な男性なのかもしれないが、医者になって間のない涼介さんの忙しさはそばにいる私が十二分に知っているから、その分余計に彼の体調が心配だった。

そりゃあ私だって最初の頃は家で過ごそうと提案しようと思ったのだけど、あんなに優しい目で嬉しそうに「どこに行きたい?」なんて聞かれたら私はもう何も言えなくなってしまう。
最近はもう涼介さんが楽しければそれでいいか、と私の中で収束方向に向かっていた。
そんなこんなで今日は涼介さんと一緒に最近ニュースでよく紹介されているいろは坂の頂上、男体山へ来ていた。


「う、わぁ…凄い綺麗!」
「予想以上だったな。来るタイミングが良かったらしい。」

まさに絶景である。

四方を囲むように連なる山々は赤、橙、黄、緑などの様々な色に彩られ、まるで綿密に計画されて装飾されたかのように美しかった。
走りにはよく来ていたいろは坂だったが、諸事情で陽が落ちた時間帯にしか来ていなかったので今の今までここの紅葉がこんなにも綺麗だなんて少しも知らなかった。
美景に心奪われ、少しでも周囲を見渡そうと柵から身を乗り出していると急に伸びてきた長い腕に腰を引かれ、後ろで待ち構えていた涼介さんの広い胸に収まった。

「危ないだろ」
「ごめんなさい。つい夢中で、」

近くなった顔に恥ずかしくなって顔を反らせば、上から可笑しそうに笑う声が聞こえて私は更に赤くなる。
涼介さんはいつも確信犯でいていじわるだ。(そして飴と鞭の使い方が上手い。)
そうこうしていると腰にまわる腕にぐっと力が入ったのを感じて、放してもらうことを諦めて私は柔軟剤のいい香りのする胸に身を預けた。
まばらにいるカップルや観光に来ていた人たちがちらちらこちらを見てくることに少しだけ羞恥を感じたが、それ以上に涼介さんと共に過ごせるこの幸福感が私の心を満たしていた。








(また来年も見にこようか)





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -