「…ん、」

月の光が射し込む肌寒い秋の夜更け。
涼介は、何かが自分を揺り動かすような感覚にふと目が覚めた。
覚束ない意識の中、視界の端に映る存在と温もりに思わず笑みがこぼれた。
寝る直前まで涼介に怒られ、その気まずさからかいつものように寄り添ってこなかった名前は今はむしろ仰向けに寝る彼の胸にひしとしがみつくようにして腕を枕にくうくうと眠っている。

まったく、可愛いものである。

こうも可愛いことをされてしまったら、もう許してやるしかない。
彼女のことなら寝る前にあった事なんて微塵も頭に無く、ただただ寝ぼけた無意識の上での行為だろうから余計にあざといのだ。
きっと明日は平然と彼女に接する俺を見て不思議そうな顔をするに違いない。
そんな朝の情景と名前の表情が安易に想像できてしまい、つい笑いがこぼれた。
しかしそんな彼女の無用心さと無防備さにはほとほと困らされたもので、更に取り繕おうとしてもどうしようもなく自分を乱す彼女の無邪気さにはそれ以上に手をやいていた。
自然と名前の頭に伸びた手はまるで幼子にそうするかのように優しく髪を撫でつけ、力強く引き寄せる。

「んん……、」

自分より幾分も高い名前の体温は心地よく、冷え性の気がある涼介にはいい湯たんぽ代わりになっていた。
甘い芳香を散らす頭に口づけ、慈しむように額にもキスを落とす。
名前が起きている時は彼女の歳にあわない幼さと年齢の差ゆえに、どうしても普段より一層冷静で大人であろうと見栄を張ってしまい中々こんな風に名前を構ってやることが出来ないでいた。

(つくづく自分も不器用なものだな。)

静かに自嘲し、涼介は彼女の小さく華奢な身体を抱え直しゆっくりと瞳を閉じた。

空高く昇る月。夜はまだまだ明けそうにない。





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