課題ばっかりしていて少しもかまってくれない鈴木に愛想を尽かして部屋の散策をしていたら、束ねられたカーテンの裏に隠すように置かれたちっちゃくて可愛いオレンジの鉢植えを見つけた
「わ、サボテンだ。育ててんの?」
「結構前からな」
「へーー…」
丸くてとげとげのサボテンは弱ってるようには見えなくて、さらに土はちゃんと湿っていた
毎朝水あげてんのかな…鈴木が、うける
「…何か言いたそうだな?」
「いやーなんでも」
動植物を愛でるような人だとは思ってなかった
なんて言ったら殿のご機嫌がすこぶる悪くなるのは読めている
「でも、ちょっと意外だなーと思って」
自分で買ってきたの?
とげとげを指でつつきながら何気なくそう聞けば、鈴木はとっても不機嫌そうな顔で振り返った
「…お前覚えてねえのか?」
「は?わたし?」
「一年の時お前と雑貨屋に行ったら雑貨屋に売られてるとか可哀想すぎるとかなんとか言って買っただろ」
「あぁあ!そっか鈴木にあげたんだったね!」
あのときは少ししなっとしていてこれよりもまだ一回り小さくて本当に可哀想だと思ったんだけど、私に金銭的な問題が発生して二つしか買えなかった
でもあのときは黒いビニールのポットに入れられていただけだった気がする
「お前も持ってんじゃねえのか」
「え…佐藤にあげたよ?」
「お前…!」
(そんな怒ることないじゃんよ)(そうだな、あの時お前を見直した俺が馬鹿だった)