家寄ってけよ。ふだんよりやけに素っ気なくそう言われた放課後にお邪魔した鈴木宅
学校帰りに彼の家に寄るのは珍しい事じゃなかったし、私を呼ぶときに彼が不機嫌そうなのも多々あることだったからこのときも鈴木の言動に(なにかまずいことしたのか1日を振り返ったけど)、たいして違和感も疑問も感じていなかった

「────っ、」

だから玄関に入ったと思うや否や自分の身に起きたことを理解するのに酷く時間がかかった





「……なにすんの」

「うるせえよ」

ぎり、と閉まったばかりのドアに抑えつけられ肩には鈴木の細長い指が食い込んでいる。いたいし、お邪魔しますも言わせてもらえなかった…

そんなことよりもどうしてこんなことになったのか見当がつかない。
彼が多少嫉妬深いのは今までの付き合いで充分理解してるし、そんな嫉妬深いところが大好きで愛しいと思う。けど、常に鈴木を怒らせていたいわけでも喧嘩したいわけでもない。だからこそ自身の行動には気をつけていた。はずなんだけど…

そっと鈴木を見上げたら、伸びた前髪からぎらぎらと鈍く光る眼と視線がかち合った
ぞくりと背筋が震えるくらい怒りの籠った眼はどう考えても彼女に向けるべきものじゃないし、ほんの少しだけ狂気じみている気がする

「お前なんか俺に隠してんだろ」

「んむ、」

空いた手で顎を掬われ、さらに親指で私が話せないくらいの力で唇を乱暴になぞる。なまえの口から言って欲しいのかほしくないのか、言えといわれてもまだ原因が解らないから答えようがないし、さっきから脳みそフル回転させて今日から一昨日のことまで振り返ってはみてるけれど至って平和な日常しか思い浮かばないしわからない。それになまえが思い出せる範囲内での一大ビッグイベントといえば土曜日にこの家に泊まったことくらいだ。

「わかんねえのか」

「…ごめん、」

鈴木に睨まれると、疚しいことも悪いことも全然なにもしてないのに目を反らしたくなる
視界いっぱいに映る怒った鈴木。…怖い
こんなに怒ってる原因がなんであれ嫌なところがあるならちゃんと言ってくれればいいのに。私にだって学習能力くらいはある。そう考えていると少し腹がたって、顔を反らして鈴木の手から逃れ、名前を覆い隠すようにする身体をぐ、と押し返す


「ね…ちょ、やっ────んっ」

それが癪に触ったのか突然鈴木は強い力でなまえの顎を捕み上を向かせ、名前が言葉を発する間もなく口を己の口で塞いだ


「ん、──ん、ふ」

くちゅ、ちゅ、舌をめちゃくちゃに絡め、吸われ、なにもかも全て持っていかれそうな位濃密なキス
至極乱暴に口内を侵し蹂躙し息継ぐ暇も拒む隙も鈴木は与えてくれない

人に中を侵される感覚と、玄関に響き反響する唾液の卑猥な音がやけに頭に響いて、みるみるうちに身体に力が入らなくなっていくのがわかった






「お前といたらおかしくなりそうだ」

長い長いキスの後、自分の力で立ってられず呼吸もままならないなまえを抱き込み、半ば独り言のように呟いた鈴木の一言になまえは何故か涙が込み上げそうになった





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