全部ぜんぶ名前が悪いんだ。
俺の下で恐怖で顔をひきつらせる名前。
本当は俺だって名前にこんなことしたくないけど、今回ばっかりはどうしても我慢できなかった。

「敦っ、痛い……やだぁ!」
「うるさい」
「お願っ…痕つけないで!」
「やだ無理なんで」
「んっ、やだよっ…なんでそんなこと、するのっ」
「……はぁ?」

わかんねーの?
反射的に低い声がでた。
眼下には名前の胸元にちらばったたくさんのキスマーク。
さっきまでまっさらで滑らかだったそこは俺の独占欲の痕跡が痛々しく残り、彼女は俺の所有物だと主張しているようにみえた。
でも、人より貪欲な俺にはまだまだ足りない。
何度名前に証を残そうとも、俺の中を蹂躙する苛立ちは一向に消え去る気配がなかった。

「あいつと何してたの」
「あいつ…?」
「俺の部活中に二人してこそこそさ!」
「あ、ちがっ、あれは……いっ!」

名前が言い終わる前に俺は首筋に思い切り噛みついた。
いいわけなんて聞きたくない。
初めてそいつをみた瞬間、名前の好みど真ん中だなーって思った。
しかも声も名前の好きな聴きやすい低音。
とにかく名前の中であいつは完璧だった。
最初は、俺は名前の彼氏だしあいつもそれを知ってたから名前にはちょっかいをださないとたかをくくっていた。

きっとそれがいけなかった。

今思いだすだけでも腹の底から怒りが込み上げてくるのがわかる。
だけど名前は弱いから、俺が少しでも加減をしなかっただけできっと壊れてしまうから、塵ほど残っている理性でなんとか今のところ名前に怪我はさせてないけれどいっそそんなもの吹き飛ばして俺のおもうがまま名前をめちゃくちゃにできたらいいのにと思う。

「ほら早く言えよ」

「っ、───んんっ」

はじめはただの世間話をしているようだった。
それはいつものことだったし第一俺は名前と、お互いにすぐ嫉妬しないって約束しあっていたから、それも見て見ぬふりをしていた。
だけど俺が見るたびにだんだん2人の距離は縮んでいっていて、最後はあいつが名前を引き寄せてなまえの頭に顔を寄せていた。
俺しか名前にしたことないこと、俺しかしちゃいけないことをあいつは人目もはばからずなんてことないようにやってのけた。
それだけでも腸が煮えくりかえっていたのに名前は真っ赤になってあいつを見上げて嬉しそうに笑っていて、さらにただその光景を遠くから見つめることしか出来ないでいた俺の近くから「あの2人お似合いだな」なんて声が聞こえてきた。
もう我慢ならなかった。

「あいつのことヒネリ潰さなかったこと誉めて欲しーくらいなんだけど」

「いっ、た」

肩口に綺麗に鬱血した歯形の上からまたあぐあぐと緩く噛む。
痛みに歪む名前の顔はあまり好きじゃないけれど、あいつは名前のこんな表情を知らないんだろうなって思うとそれだけでなんともいえない優越感と満足感が込み上げた。
それら以上にふつふつと湧いてくる焦りと罪悪感には知らんふりをした。
このまま名前をベッドに縛り付けて動けなくしてしまって誰の目にも映らないように触れないように捕まえてしまえればいいのに。
それが出来ればどんなにいいか。
やっぱり、

「名前はわかってない。俺がどれだけ名前のこと好きなのか、不安に思ってんのか、これっぽっちもわかってねーんだよ!」

力任せに拳を枕に叩きつける。
嫌がる名前を家へ連れ帰ってきて、こうして押し倒してこんなことをしても俺は虚しいだけで、時間が経つにつれて焦燥は増すばっかりだった。
少しも抵抗せず、ただただ涙を流しされるがままになっている名前にいくら痕をつけたってちっとも満たされやしない。
もうどうしたらいいのかわからなくなって俺は、すっかり声をださなくなった小さい名前の身体を腕の内に抱き込んだ。

「もうどうしたらいいの?名前は俺のじゃないの?これって俺の独り善がりなの?名前はあいつがいいの?いつかあいつのとこいっちゃうの?俺をすてて?俺、名前のこと離したくないよ離れたくないよそんなことなったらきっと俺死んじゃうよだからふらないでお願い俺を好きでいて好きだよ大好き愛してる」

もう自分で何をいっているのかわからなくなってめちゃくちゃにはなしていたら、相変わらずなにも言わない名前の腕が首にまわってすごく強い力でだき寄せられた。
顔を埋めた名前の涙で濡れてしまった髪からは俺と一緒な香水の匂いがして、どうしてかすごく泣きたくなった。





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