ぴんぽーんぴんぽーん


「うぅー……」
鳴り響くチャイム音に私は熱のせいで更に重たくなった体を持ち上げて枕元の携帯を開いた。今はお昼の12時を少しすぎたくらい。午前中に飲んだ薬のおかげか、今朝まで名前を支配していた酷い頭痛は和らいでいた
「どちら様ですかー」
『俺』
電話の子機ごしに響いた、聞きなれた低い声に私は飛び起きた。わ、寒い。そういえば今日はテスト週間で学校が午前で終わる日だった
「………あー鈴木様っすかー…今日はお一人で?」
『んなのいいから早く開けろさみぃ!!』
頭痛が再発しそうなくらい大きな声を耳に受け、布団から飛び出して名前は急いで階段を駆け降りた。もしかして私のこと心配してきてくれたのかな、そう思うと嬉しくて名前はスリッパのまま玄関に飛び出した

「なんだ、思ってたより元気だな」

ドアをあければそこにいたのはやっぱり鈴木一人だった。ブレザーとセーター着て更にマフラーまでまいて完全防備のくせに我が儘言って病人走らせるなんてもう流石鈴木さまとしか言いようがない

「……あれ?佐藤とへーすけは?」
「先かえった」
身を乗り出して玄関先を確認する名前の脇をすり抜けて先に、名前の部屋がある二階へ登っていった鈴木。なんてやつだ
なんていうか、もっと礼儀正しくしてもいいんじゃないかとか思ったけど、鈴木の手にドーナツ屋さんの箱がぶら下がってるのが見えたからそこは目を閉じておいてやろう



「へい、おまちどー」
「さんきゅ」
「鈴木最近よく飲んでるよね、カフェオレ」
最近なんとなく絡むようになって解ってきた鈴木の好きな飲み物(好きかどうかは解らないけど最近本当によく飲んでる)カフェオレ。今日は寒いから、レンジであっためてきたそれを鈴木の前に置いてそう言えば、彼は心底意外そうな顔をして私を見上げた。
「どしたの?」
「意外に人のことよく見てんだな」
「鈴木君はまるで私が他人に一つも興味ないような言い方をするね」

「実際そうだろ」

…まあ、そう言われればそうなのだけど。然り気無くそらされた視線と普段より冷たく聞こえた声音に、まるで名前が人に興味をもつようになることを諦めたような雰囲気があって、遣る瀬ない気持ちになった。けれど、そんな私でも一応恋愛感情なのかどうか解らないけれど明らかに周囲の人間とは違った特別な感情を抱いている人だっている訳で、
「私にだって特別な人くらいいるよ」
「へえ、親だろどうせ」

なんて失礼な男だ。

「ぶっぶー、身内じゃないです異性です」
「……彼氏いんのか?」
箱を抱えてドーナツにかぶり付こうてしていた鈴木が私の一言に顔を上げて言った
…私にくれるんじゃないのかな
「いたら毎日鈴木たちと一緒に帰ったりしないよ」
「ふーん…、」
そりゃそうだよな、なんて鈴木にしては珍しく私に毒づかないで、さっき食べようとしていたドーナツを口いっぱい頬張った。
「ねえ、それ私に買ってきてくれたんじゃないの?」
「そのつもりだったけど…やめた」
「え、なんでよ!!」

「お前、俺が思ってた以上に元気だった」

それだけの理由で…!!
鈴木が1人でお土産を持って私を見舞いに来てくれたことが嬉しくて体調が悪いことなんてどうでもよくなった。なんてそんなこと言えない私は、衝動を抑えて少し冷たくなったカフェオレを飲み干す。
「……なんだよ」
それでもまだ期待が大きかった分悔しくて、鈴木を見れば少しだけ見えた彼の腕の中のドーナツの箱には私の好きなドーナツが沢山入っていた







(あれ…私、鈴木にどのドーナツが好きとか言ったことあったっけ?)





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