この時期の空を甘く見てはいけない
たとえ朝は快晴だったとしても、夕方は必ずといってもいいくらい雨が降っているのだ




「(ほーらね)」

放課後、担任にしつこく言われていた提出物を出し終えた名前は玄関先に出て改めて外を確認し、小雨の中を走って飛び出して行く生徒達を見て自分の予感が当たったことに少しの優越感を覚えた
「あ、名前!ばいばーい」
「ばいばい、走ってコケないでよー」
わかってるよー、危なっかしそうに走っていった友達
行く方向が同じなら傘にいれてあげればよかったかな、なんて少し後悔しつつ名前は持っていた傘を開いた。
一ヶ月ほど前に親にねだって買ってもらった傘は、大切に使っているため今も新品同様傷一つないしこれからつけるつもりもない。少し大きめの傘は荷物や足を濡らしてしまう心配がないから気に入っている。
そんな傘をさしていても嫌になる雨

「(明日も雨だよねえ…)」

厚い雲が垂れ込む鉛色の空を見上げてため息をついた
どんよりと暗い空は気分までもをどんよりとさせる
ばちゃばちゃと水を弾かせながら名前を追い越していく人たちの中に知った人はいない。なんとなく寂しくなって名前は後ろを振り返ると、ぽつぽつと校門から出てくる人の中に一つ、よく見知った長身がみえた

「佐藤!」

名前がはっとした時にはもうその人の名前を呼んでいて、それに気がついた佐藤はいつもの笑顔でこちらに向かって走ってきた。おっきい犬みたい
「名前今かえり?」
「うん、佐藤は今日一人?」
「そー、日直で日誌書いてたら少し遅くなった」
「そっかー、佐藤今いそいでるの?」
「全然。ただ、雨が酷くなる前に帰りたいなと思って」
「君も傘を忘れた一人か!」
「そうだね、なに、名前入れてくれるの?」
「…まあ、一人で帰るのも寂しいしね」
「やったー、じゃあお邪魔しまーす」

そういって嬉しそうに身を寄せてきた佐藤はさりげなく名前の手から傘をとると、名前が濡れないように傘を少し傾けてくれた。






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