「っ、」「痛かったー?」ごめんね?名前を棚に加減なく押し付け、おどけるように可愛く小首をかしげて彼女をのぞきこむ紫原の表情に反省の色なんて微塵も浮かんではいない。それどころか紫原は、名前を逃がすまいと股に片足を差し込み、片手で名前の両手をくくる。そんなことしなくたって逃げやしないのに。
それにしてもうかつだった。コールドスプレーがないと言って私の所に紫原が来た時点で気づくべきだったし、一人でこの人気のなく薄暗い備品庫にこなければよかった。「それにしても、こんなに簡単に名前ちんと二人きりになれるなんて拍子抜けだなー」「…冷やして湿布するから体育館で待っててって言ったじゃんか」「俺まつのキライ。…それよりさ、名前まだ峰ちんと別れないの?」「またその話?先に私のことフったのは紫原じゃんか、だから私は、」「名前が峰ちんと一緒にいるとこ見たくない」「だから、」「ヤなんだってば!!」「っ、」「…ねえ名前は峰ちんと手つないだの?キスは?……えっちは?」「してないよ」「嘘つき。嘘つきは閻魔様に舌ちょんぎられるんだよ?」「だからなんっぷ───っ!!」「は、」「っなにすんのよ」「もっかい俺のこと好きになってよ」「無理、私大輝のこと、」すきだし。そう言おうとした彼女の口は再び紫原によって塞がれた「うるさい黙れなにもいわな
いで言うなっ」「ワガママ。…一つだけいいこと教えてあげようか」「なに」「私の目にもう紫原は写ってないの。手遅れ。私が大好きなのは、抱き締めてキスしてエッチしたいって思うのは大輝だけなの。」「嘘つき、嘘つき嘘つき嘘つきっ、名前なんて、」「嫌い?」「っ、」今さら後悔したってもう遅い。こうやって紫原に迫られてもキスをされても抱きしめられても、名前の心は少しも揺れることはなかった。首筋に顔を埋めて骨が軋むくらい抱き締めてくる紫原の広い広い背に名前は黙って腕を這わせた。
馬鹿な人。





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