「くそっ」
真威が真選組に潜入していた事がバレたらしい
今すぐにでも助けに行ってやりてーが…
今は万斎も来島も他の仕事でいねェしな
一人で敵陣に乗り込んで、俺まで捕まるような事ァ…
「ちっ…」
刀を持って立ち上がった時だった
外がいきなり騒がしくなった
「どうした」
「真威さんが戻って来たらしいです・・・ッ」
我が耳を疑った
真選組屯所内からたった一人で逃げ帰ってくるなんざ、不可能に等しい…
「高杉様…」
「真威…っ」
ボロボロになった真威を抱きかかえ、自室に運ぶ
不思議な事に真威は血まみれなのにも関わらず、怪我をしていなかった
まさか…全部返り血
「真威…お前…」
「大丈夫です…」
震える声で真威は
った
「近藤…土方…沖田……他隊士数名を斬って来ました」
真威は俺の着流しを力いっぱい掴む
「可笑しいんですよ、アイツら!私が敵だって分かってるはずなのに…私が刀振り回したら信じられないって顔して!!
なんの抵抗もしないで…私を止めもしないで、抜刀もしないで!!」
真威の言葉から、真選組の奴らが動揺していたことが分かる
真威を本気で仲間だと信じていたに違いねェ
鬼兵隊幹部だって情報が流れた後も、何かのまちがいだと…
「私…分からないんです」
「真威…」
「アイツらを斬った事…本当によかったのか……」
涙を流しながら言う真威を抱きしめた
コイツに辛い思いをさせた…
敵だったとしても、真選組は真威にとって居心地のよい場所だったに違いない
嘘でも、仲間を演じた中で、ソイツらを殺すのが辛かったに違いない…
「私…私……」
さよなら楽園
「私…真選組の皆が大切になってた…!
もう…どうしようもないくらい…」
抱きしめるしかなかった
それ以外に俺は術をしらなかった
「俺が…」
愛した女が泣いたときに
「俺じゃあ…いけねェか…?」
俺は何もできねェ…
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