「真威…何やってんだ…?」
「あれ?真選組副長さんこそなにやってるんですか?」
山崎から信じられない連絡を受け、屯所に戻って来るとそこは地獄と化していた
まさに地獄絵図
隊士達が血まみれで至る所に転がっている
動く奴は一人としていない
「真威がやったのか?」
「それ以外に何があるっていうんです?」
総悟の刀を持った、返り血まみれの真威は無邪気に笑った
信じられない。信じたくなんかなかった
ここに倒れている隊士達も同じだったんだろう…
誰ひとりとして抜刀していない。傷は真っ正面から。誰ひとりとして真威に恐れをなし、逃げた奴はいなかった
「馬鹿ですよね、こいつら。抜刀もしないでただ、私に斬られるだけなんて…」
そして……
「ほんと…皆……馬鹿だよ」
泣きながら切り掛かってくる真威を、裏切り者なんて誰ひとりとして信じられなかった
正確には信じたくなかった……か。
「貴方で最後です。副長さん」
頬につたう涙を気にもしないで、真威は俺に刀を向けた
真威は…涙を流していることにすら気付いていないのかもしれない
「上等だ…。こいよ」
俺は他の隊士達と違う。抜刀して、それを仲間だったはずの女へ向けた
真威が刀を構え、突っ込んで来るのを刀で受け止め流した
真威は本気で俺を殺すつもりできてる。俺は真威を殺す事なんてできない
刀がぶつかり合う度、高い金属音が響き渡る
泣きながら戦う相手を切れるわけねェ
ましてや俺はまだ、真威を仲間だと信じている
真威が俺に刀を向けてるこの事実が、全て夢だったらいいのに
ぐちゃ−−ッッ
その時。何が起こったのか理解するのに時間がかかった
俺の胸元に飛び込んで来た真威の刀が、俺の体を貫通した
ただそれだけの、単純な事だった
一気に力が抜け、その場に倒れ込む
痛みは感じない。ただ、死にそうだなと思った
手を動かすのも精一杯な俺を、真威がゆっくりと抱きしめる
何やってんだ…と口にする前に真威が口を開いた
「ごめんなさい−−ッッ」
そこにいたのは紛れも無い、いつもの真威で
裏切りなんて嘘だったんじゃないかと思った
俺が刺されたのも全て全て嘘だったんじゃないかと…。
死にゆく瞬間
(ああまるで長い悪夢から醒めたようではないか!)
「なんつー顔してんだよ。また総悟に虐められたのか……?」
「…っ。ごめんなさい、本当に…ごめんなさい」
「泣くなよ…。お前らしくねェぜ?」
「…私らしいってなんですか?」
「そうだな…。幻とか夢みてェに…掴み所のない…俺らの仲間…」
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