「嫌!離して!!」
「それは無理なお願いですねィ。裏切り者」
俺が縄で締め上げて牢屋に放り込んだのは、同じ真選組の女隊士 真威だった。
俺だってこんな事ァしたくねーんですがねィ…
実は真威が鬼兵隊の幹部だったっていう……
山崎が仕入れて来た情報に間違いはない。
スパイだった真威をひっ捕まえて、高杉の居場所をはかせようとしてるんですがねィ…
これが中々口を割らない。
「総悟…」
「アンタに名前で呼ばれたくないでさァ」
もう一度言いやすが、俺だってこんな事したくないでさァ。
でも、俺らは『真実』でなくちゃいけねェ
だから『嘘』は許せない
「……っ」
「泣いても無駄ですぜィ。俺がSなのは、アンタもよく知ってるだろ?」
何度も言いやすが……
本当はこんな事したくないんでさァ
ましてや…惚れた女に……
真威が鬼兵隊の幹部でスパイだって事が事実でも、きっと何か理由がある。
そう思えてしかたねェ。
出来ることなら今すぐ真威を逃がしてやりてェんでさ…
「総……一番隊隊長さん」
「っ−−…」
よそよそしく呼ばれたその名に、心臓が跳ね上がる
涙を流しながら、でも笑いながら……
「ごめんなさい」
いつもみたいな無邪気な笑顔で、真威は笑った。
ごめんなさいなんて…言われる理由がないのに…
どうして……
どうして………
「私……この隊服を着た時に誓ったんです」
牢屋の鍵が入っているポケットに手がいきそうになるのを、必至で堪えた
「この服を着てる時は……真選組でいようって。真選組の皆を裏切らないでいようって…。
たとえ………鬼兵隊を裏切って、高杉様に殺されても。
真選組の仲間は…傷つけたくなかったから…」
ガチャ……
鈍い鉄の音を起てて、牢屋は開いた。
真威は驚いた様に俺を見る。
あぁ…。
俺ァ、何をしてんでしょーね。
神の光が
この身体を刺し貫く!
「え……何して…っ」
「……逃げなせィ」
「え−−−…」
縄を解かれて自由になった真威は、信じられないと俺を見上げた
「真威は…俺らの仲間でィ。何があっても…誰が何て言っても…それは変わらねぇでさぁ…」
馬鹿か、俺は。
いや馬鹿だ。
でも…それでもいい。
真威が俺らの知らない何処かで笑ってくれるなら−−…
それで−−−−…
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