「…っ」
「しつけェんだよッッ」
「さっさと消えろよっ」
−−ガッ
−−じゅちゅっ
「ぃ…っ」
転校して来てから、女子軍からの虐めは止まらない。
だけど私は、日に日にエスカレートしていく暴力に屈しなかった
学校に来ないって事は負けを認めるのと同じだと思っているから。
「ハァ…ハァ…」
痛くないわけじゃないし、傷が消えるわけじゃないけど
それでも負けを認めるのは怖かった
殴られて青く痣になっている頬。刺されて制服の白が赤く染まっている。
流石にこの姿のまま、屋上からでるのはマズイと思い、そこら辺にあるはずの鞄を探した。
「……」
が、鞄は見当たらなかった。中には応急処置様の包帯等が入っているのに。
立ち上がり、ふとグランドを見下ろすと散らかったもの達が見えた。あぁ、あの子達が捨てたのか…
「はぁ…」
どうしようか…。下に下りるまでに先生にあったりすると、めんどくさい
その場に座っていると、急にドアが開いた。
ビクッとして見てみると、そこにいたのは高杉くんだった
「今日はまた…っ」
「…?」
近づいて来た高杉くんは私の制服が血まみれなのを見て、流石の彼も驚いたようだ
ズカズカと近づいて来て、傷口の部分の制服を無理矢理まくしあげられた
あらわになった傷から、ドクドクと血が流れる
「ひでェな…」
「なによ今更…」
いつも傍観してるだけのくせに、心配だけはしてくれる
本当におかしな奴。
「見せろ」
「…」
彼は私の腕を掴んで傷の手当を始めた
どうして彼はこんな事をするのだろう…
私が痛め付けられているのを見て楽しんでいるかと思えば…
こうやって手当をしてくれたりする。
以前、抱きしめられて『落ち着く』などと言われたこともあった。
きっと彼は遊んでいるだけなのだろう
私は高杉くんの掌でいいように踊らされてるだけ
「なんで…こんな事」
尋ねて理解できる解答が返ってくるとは最初から思っていない
彼は私の腕に包帯を巻きながら、口を開いた
「お前の泣き顔が見たいからだ」
「は…?」
やっぱりね、案の定。
私には理解できない言葉が返って来た。
「お前、どれだけ殴られても泣かないだろ。だから…」
「理由になっていない気がしますが…」
包帯を巻き終わったのか、彼が私の側から離れていく
「泣き顔見る前にお前が壊れたら意味ねェだろ。」
少し納得してしまった。やっぱり彼は私を玩具や人形くらいにしか思っていない。
楽しいから遊ぶ。壊れるギリギリの危うい遊びで。でも壊れるのが嫌だから、壊れる前に治す。
そしてまた壊れるギリギリまで私を追い詰めるのね
もう踊れないの、
わかってるくせに
「治すにも限界がありますよ。所詮、玩具なんだから…」
私の声は彼には聞こえていないだろう
彼は今が楽しければそれでいい、ただの質の悪い子供なんだから
END
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