絶対なんてこの世に存在しない
「何読んでるんです?」
「うわっ!…真威ちゃん?」
屋上で暇つぶしに本を読んでたら、いきなり真威ちゃんに声をかけられた
色々あって仲良くなった俺達は、よくここで会うようになっていた
別に約束してるわけじゃないけど、最近じゃほぼ毎日。
「『この世に存在しない物』って本。」
「難しそうですね…」
俺が質問に答えたら、真威ちゃんはそう言った
そう言う真威ちゃんだって、随分難しそうな本をこの間読んでたよねι
でもたまに、童話を読んでたりする所が可愛い
普通に話してくれるようになった……けど、まだ敬語は直してくれないよな
そんな風に考えてたら、真威ちゃんは俺が持っていた本を横から覗いた
近くで真威ちゃんの綺麗な髪が揺れる
シャンプーの香が漂ってきて男にはたまらない
でも彼女は無意識にやっているから、そこが厄介だったりする
「絶対なんて無い…か」
本の一説だった
この世に絶対など存在しない。
誰一人として絶対を証明してみせた者はいないのだから
人間は『絶対』ではない。いずれは死ぬからだ。
無機物は『絶対』ではない。いずれは壊れるからだ。
ならば、死なない、壊れない『絶対』とは一体なんなのか。
そういう事が淡々と綴ってある本だった
正直俺も、絶対なんか信じて無い。
絶対の意味もよくわからないし、そもそも絶対とは何を指し示しているのかって事だ。
「簡単ですよね…こんなの」
「へ?」
真威ちゃんは当たり前のようにそう呟いた
俺の隣に座って、空を見上げた
「絶対の意味」
「俺は…わからないなぁ」
真威ちゃんと俺は、どこか似てるところがあったから、真威ちゃんの台詞には驚いた
「私は山崎くんを信じてる」
「へ?」
いきなり真威ちゃんが俺を見つめて言ってきた
思わず素っ頓狂な声だしたら、笑われた
「これは絶対なの。」
真威ちゃんはそう言うとまた空を見上げた
……自分が思った事が絶対って事なのか?
自分を信じろって事?
「でも…」
それでも俺はわからない
絶対の意味なんて……
俺だって真威ちゃんを信じてるよ
でもそれが絶対なのかってきかれたら、正直不安なところもある
「もしかしたら…」
唯一、
絶対の意味を持つ者へ
「絶対を知るのは…」
「神様だけ?」
俺が言おうとした台詞を真威ちゃんが先に言ってしまった
目を合わせて、笑った
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