「“ホラー”って何?」



俺の家に遊びに来た真白が読んでいた本から目を離して言った



“ホラー”の意味が分かってねぇのか…


真白は実際より精神年齢が低いっつーか、

詳しくは知らねぇけど、真白はいろいろ事情があるみてーだし

知らなくても不思議じゃない。



「“ホラー”ってのはだな、“怖い話”だな」


「“怖い話”…?」



急に真白の顔色が変わった


…まさか



「“怖い話”嫌いなのか?」


「き、嫌いじゃないけど…っ。好きでもない!」



ははぁ…。意外な事実を発見した


あのいつも強気の最強プリンセスが、怖いものが嫌いだとは…



「せっかくだから見るか」

「Σえ!?」


俺の言葉を聞いて真白は信じられないって顔をした

まったく…いい反応しやがって…(妖笑)



「わ、私帰るね」


「まさか、真白…怖いのか?」


帰ろうと立ち上がる真白を引き止める為に、俺は言う


「へー、真白にも怖いものがあったんだな。意外だな…」

「…む」



真白は、【馬鹿】とか【弱い】とか【負ける】みたいな言葉が嫌いだ

だからこうゆうふうに挑発してやると、すぐに食いつくはず



「こ、怖いわけないじゃない。見ればいいんでしょ!」


はい、成功。





「いっ…ぅ」


DVDをつけた瞬間、真白はクッションを力いっぱい抱いた

画面が見えているのか、いないのか…


「おい。そんなんじゃ、見えてねぇだろ」

「見えてるよ。大丈夫、気にしないで」


まったくコイツは…!



クッションを取り上げると真白は信じられないという顔をして、体操座りをした

顔を半分以上埋めている


「まだ怖くねーって」

「む」


首根っこを掴んで顔をあげさせると、お前は人間じゃないって目で俺を睨んだ

全然迫力がない



しばらくして、まだ怖くないと分かったのか体操座りのまま大人しく見始めた




「…っ」


そろそろ怖くなってきたのか、真白がビクビク震えはじめた

きゅっと俺の袖を掴んでいるのに気付いて、可愛いななんて思ってしまった



と。



『きゃぁぁあぁあぁぁああああ!!!』


「きゃぁぁぁあ!」

「うわっ!!」




よそ見をしてる間に、怖いシーンになったのか真白が叫んで飛び付いて来た

俺は、DVDが怖かったんじゃなくて真白が飛び付いて来た事に驚いた


「お、おいっ!」


真白は俺の首に腕をまわして、ピタッとひっついている

真白の泣きそうな声が、すぐ耳の近くで聞こえる



や、ヤバイヤバイヤバイ!!

これはやべェって!!



「ほ、ほら!DVD止めたからっ!!」


「ぅ…ホントに?」



こ、この至近距離で、涙目で首を傾げて見上げてくんなぁ!


くっ、

こ、堪えろっ。

堪えるんだ俺−−っっ



「べ、別に怖くなかったけどね…っ」


俺から放れながら、真白は涙を拭った



あんだけ叫んどいて怖くなかったはないだろι


まぁ、何はともかく俺から放れてくれてよかった……!



「まったく…悲劇だよっ」


さっき怖くないって言ってたばっかりなのに、そんな風に真白は言った



真白にホラー系を見せるとヤバイって事が分かった


怖さの余りに抱き着いてくるってのが、よーく分かった


俺の方が何かと危険だから、これからは絶対見せない!



どっちかってーと、真白より俺の方が悲劇だったんじゃ?





ホラー映画鑑賞の悲劇





「シカマル…」


「ん?」



再び本を読み始めた真白が、ふと顔をあげて俺を見た



「今度怖いの見せたら、シカマルの事嫌いになるからw」



極上の笑顔の真白が、俺の目の前にいた


やっぱり、これは俺の悲劇じゃねーかι





2011*07*17


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