※転生のようなパラレルワールドのような



寄せては返す、だなんて良く言ったものだと思う。気泡が入り混じっているからか、僅かに白い波が海岸線に沿って砂を押し遣っては、また海へと戻して行く。その様は美しくも儚くて、寂しくて、それでいて暖かいのだ。夏も終わりに近づく8月末、まだまだ暑さは残るけれど、風は既に秋のそれだ。結わずに遊ばせている髪を撫でていく風は僅かに涼しくて心地好い。何かに呼ばれているような気がして、事有る毎にこうして海へ足を運んでいたけれど、何も無くて。それでも思い違いのような気はしなくて。夕焼けが空だけでなく海までを赤く染め上げるこの時間帯にやって来たのは初めてだけれど。そういえば幼い頃、父から聞いたことがある。空が青いのは、海の色を反射しているからだと。そんな馬鹿な、なんて子供ながらに思っていたけれど、何故だか今はそれを素直に受け止めている自分が居る。調べたことなんて無いけれど、ロマンティックでいいじゃないか、なんて。ふと、砂浜にしゃがみ込んでみる。小さな頃は砂に絵を描いたり、お城を作ったりして遊んでいたけれど、最近はめっきりしなくなった。真っ白な砂を掴んでみても、掌から零れていくだけだ。そろそろ潮が満ちてくる頃だろうか、やって来た時よりも波が近くなっているような気がする。親も心配するから帰ろうかと腰を上げた時、どこからか聞こえてきた歌声。いや、歌声というほど澄んではいない。少し詰まったような――これは、鼻歌だ。聞いたことのないクラシックの一節は、何故か耳に馴染む。昔から知っているように。思わず音のする方へ体を向ければ、一人の少年が笑みを浮かべて佇んでいた。透けるような色の肌と髪、赤い瞳に驚くくらい細い首――そして、優しいテナーの声色。全てを私は知っている。生まれる前からずっと、知っていた。





「会いたかったよ、なまえちゃん」

「私も、ずっとずっと、会いたかった」





―――――――カヲルくん。




契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは

(二人で約束したね、お互いに涙を流し合い末の松山を波が越さないように、この愛も変わらないと)



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