暖かい地方だと思う。比較的南方に位置するのも理由の一つなのだろうが、それだけではないだろう。人と人との縁や、ポケモンとの縁が豊かなここを、昔の人々は「ホウエン」と名付けた。気候的にはこの時期だと少し暑いが、広がる海や豊かな自然のおかげで嫌な気分は一切ない。美しい場所、まさに楽園、それがホウエン地方だ。



彼女が旅立って何年が経っただろうか。ポケナビで連絡を取ることはあるが、それでもお互い忙しさにかまけてついつい後手後手になってしまう。ポケモンバトルが得意な彼女は、各地方を旅するという道を見出したのに対し、ミナモシティで戦ったあの日、俺は自分の限界を悟ってしまった。俺にバトルは向いていない。元々父さんが研究者だったし、薄々そんな予感はしていたから、そこまでショックは受けなかったけれど。バトルはきっとハルカのほうが向いている。なのに何が楽しいのか、ハルカはコンテストに出ずっぱりだ。センリさんからバトルの特訓もするよう言われているはずなのに、ひらりとそれを交わしては今日も今日とてポロック作りに励んでいる。俺はといえば、相も変わらずフィールドワークに精を出しては、父さんの手伝いばかり。周りには「二代目オダマキ博士」なんて言われる始末だ。



「帰るか、ジュカイン」

かつてキモリだったパートナーは既に最終進化を終えた。相変わらず目つきが悪いが、まぁそこが可愛いところ……なのかもしれない。パッチールの生態と模様の関係を調べるためにハジツゲタウンまでやって来たものの、今更ながら火山灰が物凄い。ビードロくらいなら作れるだろう。けほ、と小さくむせるジュプトルをボールに直し、代わりにオオスバメを出す。その背に乗れば、鋭く一声鳴いて翼を羽ばたかせた。長年連れ添っていれば何も言わなくても分かるもんだな、なんて呑気に考えながら空を飛ぶ。どんどん小さくなっていくハジツゲタウンのオレンジ色の屋根を見詰めながら、その柔らかな羽毛に顔を埋めた。



ミシロタウンに到着し、真っ先に研究所へ向かう。家で一休みしても良かったが、先に結果を渡した方が楽だ。どうせ面倒臭くなるのは目に見えている。軽く頭を振ったオオスバメをボールに戻し、研究所の扉を開ければ、父さんの助手が「火山灰ついてますよ」と肩を掃ってくれた。相変わらずよく気が付く人だ。軽くお礼を言って奥へ進む。鞄から調査結果の紙束を取り出した時、父さんと話す人物が見えた。俺に背を向けている状態だから、後ろ姿しか見えない。けれどその姿は、きっと、

「……なまえ」
「あ、ユウキくん、お帰りなさい!」

バサバサと紙束が床に落ちる。あーあ、折角綺麗にまとめたのに、また順番通り並べないといけない。でも全部こいつが悪いんだ。全部、全部、こいつが。帰って来るなら連絡くらいしろよ、とか、何でここにいるんだ、とか、綺麗になったな、とか、言いたいことは沢山あるのに、その笑顔を見ただけで全部吹っ飛んだ。

「、ただいま」

やっぱり俺よりも小さなその体を力いっぱい抱きしめた。父さんが目の前にいるけど、まぁいいか。







RSEリメイク記念
オオスバメの大きさって0.7mだろとかいうツッコミはなしでお願いします…
ユウキくん、おかえりなさい!
初めてプレイした日からだいすきなキャラです

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