……まずい。これは実にまずい。

今日はお香ちゃんと飲みに行った後泊まるって言ってたから絶対帰ってこないと思ってたのに。素っ裸でリリスちゃんとベッドを共にしている僕の目の前に、なまえはいた。ちなみに、今は午後11時を少し過ぎた頃。ちなみになまえが出かけて行ったのは6時頃で、リリスちゃんがやって来たのは10時頃。いや、そんなことはどうでもいい。何でなまえが帰ってきてんだ。目の錯覚か。いや、僕は9つの目を持つ神獣だ。そんなものあるわけがない。

「………」

扉を開いた状態で固まったままでいるなまえと、楽しげににんまりと笑みを浮かべるリリスちゃんと、一人慌てふためく僕。何て滑稽な光景なことか。とりあえずほっぽりだしてあった白衣を申し訳程度に羽織ったけれど、これまた何て滑稽な姿だ。野郎の裸白衣とか誰得だよ。こういうことはもっと可愛い女の子に……ってそんなこと考えてる場合じゃない、なんて言い訳しようか。

パターンその1。
「お風呂に入るところだったんだ!」
「何で脱衣所で脱がないの」

はい論破ー。自室で脱いでから外の露天風呂まで行くなんて普通はしない。明らかに今から致しますって状況だ。これは没。

パターンその2。
「寝るところだったんだ!」
「何で裸なの」

ごもっともです。一応僕だって致した後でも服は羽織って寝る。素っ裸で寝ることなんて、まずない。というわけでこれも没。

パターンその3。
「着替えるところだったんだ!」
「何で女の人がベッドにいるの」

これはもう言うまでもなく没だ。

まずリリスちゃんがベッドにいる時点で何を言っても無駄な気がする。ていうか無理だ。いや、別になまえとは付き合ってるわけじゃないけれど、最近店の経営がやばくなりかけてたから当分女遊びは控えますって宣言したところだから、非常にまずい。僕たちの間では約束を破るのは駄目だって、暗黙の了解があるから。あぁもうどうすればいいんだ。土下座か?土下座すればいいのか?

「なまえ、この通り。本当にごめん。早々に約束破って女の子連れ込んで、申し訳が立ちませ……」
「リリスさま!」
「……は?……、ぐえっ!」

白衣一枚で情けなく土下座する僕を容赦なく踏みつけて、あろうことかなまえはベッドに横たわるリリスちゃんのところへ一直線。

「まぁ、なまえちゃん。お元気〜?」
「もちろん!リリスさまこそ、お元気ですか?」
「うふふ、見ての通り元気よ」

……え、なに、この二人、知り合い…?何か僕一人だけ置いて行かれた気分なんだけど。白衣一枚で冷たい床に土下座してたからか、思わずくしゃみが出た僕を、ゴミでも見るような目で見たなまえは、リリスちゃんの手を取り上げた。

「あのぅ、あたし今日お香姐さんのところで泊まる予定だったんですけど、お香姐さん、蛇のお世話とか色々大変みたいだったから、帰って来たんです…」

「あらぁ、そうなの?残念ね」

「だからリリスさま、こんな駄獣ほっといて、あたしと飲みに行きません!?」

「……んー、……うふふ、白澤さまには悪いけど、行っちゃおうかしら」

あれよあれよという間に下着姿から服を着たリリスちゃんは、荷物を持ってさっさと出て行ってしまった。なまえが早く帰ってきた理由は分かったけど、

「こんなのってないよ…」

あぁ、約束を破った罰か!

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