06 | ナノ


ガゼル様に「バーンには気をつけておきなよ」と言われたのでその通りに気をつけていたら、オトウサンに「バーンを探してミーティング室に連れてこさせなさい」と命令されたのでバーン様を捜す事になった。オトウサンの近くにいたグラン様の視線が、人間でいうなら痛かった。

食堂、オトウサンに教えてもらったバーン様の自室に行ってみたがバーン様はいなかったので、とりあえずグラウンドに行ってみるとサッカーボールを蹴っているバーン様がいた。
わたしはガゼル様と同じように接すればいい。

「バーン様」
「…お前、か。なんだ、なんか用か」
「オトウサンがミーティング室へ来い、と」
「わかった。下がれ」
「申し訳ありませんが、わたしはガゼル様とオトウサンの命令にしか従うことができません」

わたしが無表情でいうと、バーン様はサッカーボールを思いきりわたしの方に蹴り、腹部に減り込んだ。普通の人間なら痛いと思うのだろうけど、わたしは痛みさえ感じなかった。ボールの勢いでわたしはその場にたたき付けられるように倒れた。
バーン様を見上げれば、バーン様はわたしの胸倉を掴みかかり、頬を殴ってきた。痛くない。
何でだろう、とかは、思わない。自分に興味がないから。

「その面、今後一切オレに見せんなよ。消えてなくなっちまえ」

普通の人間なら、痛さと悲しさで泣いていることだろう。「はい、申し訳ありませんでした。」
ガゼル様、グラン様、バーン様はマスターランク、を与えられた。ガゼル様はとても喜んでいた。ジェネシスの称号が与えられるかもしれないからだろう。
ガゼル様がシャワールームから出てきたので、わたしは決められているように立ち上がってシャワールームに向かおうと足を進めると、わたしはなぜかガゼル様にぶつかった。脳が「悪い」と電波を発信し、わたしは一歩下がって謝罪をしようと頭を下げかけると、ガゼル様はわたしの服を少しあげた。腹部に冷たい風が当たった。
わたしの腹部には円を描いた痣があった。ガゼル様は眉を顰め、「バーンかい?」と静かに言う。「はい」

「痛かったろう」
「いいえ、痛くありませんでした。」

服を下ろされた。わたしはガゼル様から視線を逸らす。視線を逸らすことは、人間が嘘を吐いたとき、最もすることだと思ったからだ。
「我慢しなくていいし、キミはもっと自分を主張していいんだよ。だからグランに酷いことを言われて、バーンに、こんなことを、されるんだ。」「でも本当にいたくないんです。それにグラン様に何を言われても、わたしはその台詞が酷いとは思いません。悲しくないんです」「…悲しくも、痛くも、ないのか」「はい。」
ガゼル様は服から手を離し、小さくほほ笑んだ。

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テーマ「人外ファンタジー」
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