にやりと笑うキッドを見上げ、あたしは冷や汗というものを流した。こんな場面、前にもあったなと思いつつ、あたしはできるだけ平然とした態度で「なんか用でもある?」我ながらいい態度をとった気でいると、キッドが「少し遊ぼうぜ」耳を疑う返答が聞こえ、否定しようとしたら、キッドはあたしの腕を折れてしまうんではないかというぐらいに掴み、無理矢理歩きだす 「ナマエ、昼飯は食ったか」 「まだだけど…」 「じゃあおもいっくそ食わせてやるからちょっと付き合え」 あたしの耳にはおもいっくそ食わせてやるしか入らなくて迷わず頭を上下に振った。キッドは満足そうにあたしの腕を離し、あたしは近くにあるステーキレストランに入って行った。とりあえずステーキ3人前を頼み、キッドは1人前を頼んだ 「キッドは船のコーティング済ませたの?」 「いいやまだだ。腕のあるコーティング職人に頼んだから、一週間のうちに終わるみたいだがな。それより、アレだ、ナマエ、お前1億越えしてるじゃねーか」 ぺラリとあたしの前に出されたのは、あたしの手配書で、握りしめた跡があるのを見る限り驚いたに違いない。実はあたし海軍側の、なんて言えるわけなかったので、ただ「うん。そうなの」と言った。こんな事情、キャプテンのローさんだけが知ってればいい話なのだ 「1億越えのルーキーは今の時点でおれにキラー、トラファルガー、ナマエ、バジル・ホーキンス…」 「ん?バジル?ホーキンス?その人も1億越えしてるって事だよね。額は?」 「トラファルガーよりも上の2億4900万ベリーだ。」 「あっ、美味しそう」 額なんてこのステーキの前ではミジンコに過ぎない ※ レストランでステーキを6人前にデザートのアイスを4人前、他のレストランでオムライスを3人前にケーキバイキング。途中からキッドの視線があたしから離れていたが、ローさんで慣れているのでどうも思わなかった。ケーキバイキングで食べてる途中、「止めておけ…」と消え入りそうなキッドの声が聞こえていた時にはさすがにお腹はいっぱいだった。 食後にソフトクリームをベンチで食べている。 「…………」 「ローさん大丈夫かなあ…仮にも骨折だし、船出航するのやっぱ遅くなっちゃうなあ。キッドは先に新世界にいっちゃう感じだし、なんか遅れたみたいで嫌だな…」 「はァ?嫌?」 「やっぱライバルには勝ちたいし」 「ラ、ライバル?誰と誰がだ?」 「え?ローさんとキッド、ライバルじゃないの」 「ふふふふふざくんじゃねェよ!」 あたしはてっきりローさんとキッドはライバル同士だと思っていた。いきなり立ち上がるキッドに通行人がまじまじとキッドを見る。キッドはそれが心地いいのか誇らしげな顔になり、ドスンとあたしの隣に座った 「ライバルじゃなかったんだ…そっか。まあ、いいや。じゃあベポがあたしを心配してると思うからあたし帰るね」 「前見てみろよ」 「ん?…ホテルだね。」 「さすがにわかんだろうがよ…ナマエ」 前にはホテル・フラワーエデンとかかれた看板があり、ホテルがある。キッドはいつものように笑っているが、あたしにはさっぱりわかずただわからない意味を必死にわかろうとしていた。キッドはあたしの腰に手を回して、「告白はあの島でしたんだからいいよな」一体なにがいいんだろうか。ローさんとはまた違う手つきだ 「眠たいの?クルーいなくていいの?」 「おいおいナマエ。そんな怖がらなくていいじゃねェか」 え?あたし怖がってなんかいないけど。 あたしが無知だからかいけないのかわからないが、困っている。本気で意味がわからない。 「その前にナマエ、お前はトラファルガーの事好きか?」 「え、あ、あたしが、」 好き、あたしがローさんの事、好き、ローさんの事、す、き 自分でもわかった。顔が熱くなり、焦点が揺らぎ、目の行き場をなくす。キッドはそのあたしを驚いたような顔で「本気か…」と言葉を漏らした。「もういいか?ユースタス屋」いつも隣で聞き慣れている声の方に振り向けば、左腕にギプスで固定してあるローさんがつまらなそうな顔でキッドを睨んでいる。 「……チッ」 「ローさん!なんで病院出てきちゃったの!?」 「お前がユースタス屋とどこか行くの見てに決まってんだろ…。はぁ、今回は焦ったぞ、ユースタス屋」 ◇ |