今ローさんはあたしが渡した細い筒を必死になり火に息を吹き掛けている。一方隣のあたしはそれを面白がってみている訳だ。こんな事で必死になってるローさん、面白いじゃない。ぴたりとローさんは行動を止めた。そしてあたしを見ずに筒を渡した。何故か受け取ってしまい、再びローさんに返そうとすると、いきなりローさんがこの場で服を抜き出した 「ちょちょ…何してるのローさんコラ!」 「吹いてろ。ある程度は火ついたからやっときゃ風呂あったまる。ったく、やった事ねえからわかんねえな」 「いいから向こういけー!」 デリカシーというものがないのかローさんには。羞恥心という言葉を知っているだろうかローさんは。筒に口を付けて息を思い切り出したが、なんだか以外に息、出ない。「おい」それを無視してまた息をかける。これすごい肺活量使うんだな。楽器やってる人なら楽なのかもしれない。「おい」もう、うるさいな。そう思ってローさんをみた瞬間目が飛び出した 「なんでパンツ一丁ううう!ばっ…ばかじゃん!」 「お前もう少し…火消えるだろーが。冷たくなるぞ」 「ロロロ、ローさんにはデリカシーが必要だと思う!」 「デリカシー? あ、ローさんと声が揃った瞬間火は無残にも消えて、煙りだけ残った。ローは深い溜め息を吐いてあたしから筒を奪い火を付けて、また息を必死になって吹き掛ける。寒そうだな、と思いローさんが脱いだ上着を背中にかけてあげたらあたしをチラリと見て口をもぞもぞと動かした。 「え?何?何か言った?」 「…何でもねえ。気にしなくていい」 「えー何さ。気になるよかなり」 「だから気にすんなって言ってるだろ。犯すぞ!」 「何がオカス?お菓子のカス?」 「……もういい…」 何故か残念そうな顔でまた筒を使って火の火力を確実に増やしていった。たまに、ローさんはあたしに対して本当に残念そうな顔をして諦めました言葉をいう。あたしは別に変な事言ったつもりはないのだが、なぜだかわからないのは確かで。ローさんがまたピタリと行動を止めた。またあたしに筒を渡すんだろうと思って腕を後ろに回すとまだ残念そうな顔をしているローさんがあたしに「勉強しろ」と一言さらっと言った 「何を?オカスの事?」 「ああ…まあ教えてやらない事も、」 「ほんと?じゃあ教えてよ」 次の瞬間ローさんは筒を落としてあたしの両肩に手を置いた。するりとかけてあげたローさんの服が地面に落ちると同時にローさんが下を向く。「はあ…」面倒臭いことなのかもしれない。「ごめんなさい」なんだか口から勝手に零れた言葉にローさんはキリッとしている目をぱちくりと開けた。 「なにが」 「あ、いや…バカで」 「まったくだ」 堕ちた筒を持って、また息を吹く。 「ローさんムーアンの事好き?」 「……はあ?」 「ねえ、好きなの?」 「…お前の方が好きだって言ったら、お前どうする?」 「どうって…」言いかけた途端、ローさんが今までにない黒い笑みをあたしに向けたきた。何を思ってるかしらないが、なんとなくその笑みはあたし的にいただけない。別に、どうするって言ったって、ローさんがムーアンよりあたしの方が好きだ、というのは嬉しいのは確かだけど、どうするって、どうもしないんだけども。 「嬉しいけど」 「…お前並大抵の女じゃねぇなぁ…普通は嬉しがって抱きつくところだ」 「ムーアンみたいじゃん。やだそれ」 「普通なんだよあいつは」 「……ローさん、やっぱりムーアンの事好きでしょ!」 ぶすっとした顔をローさんに見せれば、薄い笑いが段々声を出して笑ってきた。何でそんなに笑うんだ、笑う要素もなかったと思うんだけど。 「そりゃあ、ナマエ、お前嫉妬してるんだよ」 「嫉妬?まさか」 「…まあ、自身持てナマエ。ちょっとムカついた時、おれにキスされたの思い出せばお前なら大丈夫だよ」 何が大丈夫なのか、何一つわからない。「はあ…」なんだか意味わからなくてイライラしてきた。ローさんはあたしの頭を嬉しそうな顔でがしがしと撫でる。あらら、髪の毛がぐちゃぐちゃだわ。 つまり、心配しなくていい、という事なのか ◇ |