「お風呂は火を焚いてね。お湯も出ないからガスコンロ使ってどうぞ。水はたくさんでるから好きなだけ使って」 「ちょっと待て。料理の時お湯が使えないでどうするんだ」 「大丈夫!家の方である程度作ってくるもの」 お風呂をこの変な筒みたいなもので火を起こすなんてあたしは聞いたこともない。筒を眺めていると、ムーアンがローさんにぴっとりとくっていて離れる様子はない。ホントにグーでなぐってやりたい気分だ。なんでこんなにイライラするかなんて、わかないけど、ムカつく。早く船がこの島に着くことを願うしかないのか。無能すぎるあたしとローさん 「ああん、ローはかっこいいね」 「お前さっきから…離れろ。暑い。きもい」 「嫌よ嫌よも好きの内」 「んなわけあるか」 あたしをイライラさせて面白いんですかねムーアンは。外に出ようとするとローさんがあたしに何か言うがそれを無視して、外に出た。先程なかった賑やかさが今はある、なんでだろう。時計を見るとカチカチとこちらの時計もあちらの時計を音を出して動いている。 道に歩いていた青年と目が合うと、「やあ」初対面なのにも関わらずに近付いてきた。「やあ?」とりあいず返事をしてやると、青年が顔を頷かせてあたしの顔をジロジロと見る。何だかムカついてしまい、今までの怒りを青年に対し発動すると、青年は綺麗に飛んで行った。ムーアンにしがみつけられているローさんがひょっこり顔を出す。ローさんとバチっと目が合い、反らすとムーアンが「可愛くない女」と愚痴を零すかのように言う。 「お前ムカつくよ」 「あらそう。」 「あたしが本気になればお前なんかイチコロで死ぬ事をお忘れなく」 「忠告ありがとう。さ、私は行くわ。じゃあね、ロー!待っててねえ」 誰が待ってるか!あたしの叫びはムーアンに聞こえていても聞き流されているんだろう。宿に入ると、ローさんが疲れた表情であたしを見た。「疲れたんだが」あたしが知るか!ローさんが解決しなよ。なんて口が裂けても言えない気がした冷蔵庫を開けてみると、意外に色々とそろってる野菜やデザートにアイスもあった。「ナマエ」ローさんがあたしの名前を呼ぶ。ムカつくのはなんでだろう 「はい」 「おいおい怒んなよ」 「別に怒ってないし。それより右の部屋あたしが使いますから」 「はいはい、どうぞご勝手に」 なんだよ、そのヘラヘラした余裕そうな顔。ムカつくなあ。あたしきっと疲れてるんだろう、だからよくわからない所でミスしちゃうんだ。早くお風呂入りたいけど時間がかかるなあ、ホント。ローさんやってくれないかな… 「…あれ?」 「ナマエ、怒るなって言ってるだろうが。」 「ちょっと、入ってこないで」 「何を今更」 勝手に部屋に入ってこないでよローさん。嫌にニヤニヤしているローさんの顔を見るとなぜか更にイライラしてくる。ずいずいと部屋に入ってくるローさんを部屋から出そうと胸を押すと、ふわりと体が前へ倒れていく。あれ、力、こんなに弱かったっけ? 「うわあっ」 「なんだナマエ、今日は大胆だな」 「大胆とか違うから。なんで、そんな力弱かったっけ?」 「いや…、このまま押し返す事なんてワケないが…今日はこんなに素直なんだ。相手してやろう。」 「……意味が、わからない」 むくりとローさんが起き上がると、受け身の準備もしていなかったのでムーアンがした尻餅をしてしまった。なんだか同じ尻餅したなんて、すっごいかっこ悪いじゃん。「痛いなあ…」ローさんを睨むと、ローさんも睨み返してきた。一瞬の殺気に驚いてたじろぐと、ぐいと髪を強く掴まれ引っ張られる 「いた」 「睨まれても怖くないな。相手を睨む練習でもしたらどうだ?」 「ローさんを睨む練習?」 「おれかよ」 ◇ |