ノイズ | ナノ


あたし達の周りにはクルー以外何もない。あると言えば柱ぐらいで、キャスケットが「えーこの度はー」なんて司会を務める。ベポがストレッチをしている、で、あたしはと言うと、ローさんが「危なくなったら助けてやるから思いっきりやれ」と背中を押すと、キャスケットが「お互い手加減ナシ!ファイトー!!」と戦いが始まる合図を出した。


「(何でベポなの何でベポなの。あたしマジやられるって骨折しちゃいそう)」
「行くよナマエー!」
「ちょちょ!まっ…!」


ローさんが言うには、ベポは本当に強いらしい。絶対お前はベポをやっつけられない、なんて言われれば思いっきりできるものもできなくなる。走ってくるベポをなんとなくヒラリと交わした。こういうのは、慣れている。ベポも今のは本気で走ってないんだろう。


「ナマエ!攻撃系とか体強化とか、早くなる能力使うの、禁止な!」


ベポが地面を蹴ってジャンプ、こういうの待ってた。強化系はないけど、スピード使っちゃいけないわけで、それ以外はいいってわけだよね。指をピストルのようにして、ベポに向け「ネット!」光がネット状になり、ベポを包んだ。身動きが取れなくなったベポは受け身を取れずにそのまま落ちてくる。後ろに一歩二歩下がって、キャスケットが言うように手加減無しでベポを思い切り蹴った。


「!!…あっちゃあナマエ、やりすぎだ」
「ベポ、ショックだろうに」
「てか、ベポそんなに飛んでないじゃん」


ギャラリーうるさい。女のあたしが、そこまで遠くに蹴り飛ばせるわけないだろうが!口笛を吹いて「ソング」ベポが立ち上がって踊りだした。ソングはいろんな効果がある。今は踊らせて、体力を削っていこう。


「(あたし、結構本気でやってるなあ)」
「おっとっとと…!」
「あれもう終わり!?」


踊らせていた筈のベポがもう踊っていない。おかしい、失敗したか…。ベポが「反撃!」怒りに満ちたベポに少し後退りして、構える。どうしよう、ベポの腕力とか絶対強いに決まってるのに、あたし何構えてるんだろうか…。どうやって対処しようなんて、考えてないし、ずっと違う事考えてる。


「アイアイ!」
「うわあっと!」


なんだその両手パンチは。海老剃りに避けると、今度はベポの蹴りだ。「ネット」ベポがネットに包まりゴロゴロと後ろに下がっていった。危ない危ない。まともに食らってたらどうなってただろう。「ナマエ!ベポ!もういい!」「あ、ほんと?終わったー。いやあ、なんだか能力使ったらつかれちゃ、」ローさんが目を開いてあたしの名前を呼ぶ。え、何何?後ろから風を切る音が聞こえたので後ろを向くと、ベポがあたしに蹴りをいれようとしていた。


「ナマエ、下がって、」
「あーいいよローさん別に。見えてるもん。」
「は?」


飛ぶのがいけなかったね。体制を低くして、そのまま地に手をぐっと置き、そのままベポを蹴りあげた。支えがあるとないのでは違うんだって事をギャラリーに教えてあげよう。浮いているベポの足を掴んでそのまま下に引っ張ると、バタンと大きい音を出してベポが叩きつけられる。


「ああ!ごめんベポ!」





「なんだよ強いじゃん」
「そうだよまったく!おれナマエがこんなに強いなんて思ってなかったから!」
「ほんっとにごめんねベポォ!」


ベポに本気で謝ると、「まあいいよ!おれナマエ好きだから!」「ありがとー!」ベポに抱きつくと、少し暑くなる。ローさんが「強ぇじゃねえかよ。助けなんていらなかった」捻くれた顔になったのを何故かキャスケットとベポが宥める。