ノイズ | ナノ


キッとローさんの目はキッドに向けて鋭くなった。そこにはローさんの船とキッドの船。あたしがどの船に乗るか決めれば、そこでお互いお別れする事になる。風で崩れた髪の毛を整えると、ローさんがあたしを引っ張って船に乗ろうとするが、キッドが「クルーでもない奴を船に入れるか普通」と捨て文句を言うとローさんは振り返って「死ね」と言った。


「ナマエ」
「え?」
「おれの船と、ユースタス屋の船、どちらに乗りたい?」


気づけば真剣な目をしているローさんと、キッドがいる。ふわりと風が吹き、ローさんにつけてもらったピアスが小さく揺れた。ローさんの顔が、あたしの顔に近付いてきてローさんの鼻と鼻がくっついた。キッドが「お…おい!」と焦ったような声を出したので見ようとするが、ローさんが片手であたしの顔を動かさない。


「ローさん」
「楽しかったろう?おれの船」
「え、うん。」
「なら乗れ。お前はもうすぐで賞金首行きだ」


「それに、」少し開けた口を、ローさんはぎゅっと固く結んだ。賞金首にならないように、頑張ったつもりだったけど、意味がなかったのか。変な技を使ったり、地位が強い海軍とかを殺すと賞金首になるらしい。まったく、海賊は面倒だなと実感する。


「心配なんだよ」
「心配?なんで?」
「色々とに決まってんだろ」


ローさんがあたしの耳と、ピアスを軽く触った。がっとローさんの腕が誰かの手に掴まれた。「おいトラファルガー!」キッドだ。ローさんが舌打ちをすると、鼻と鼻は離れて、次はローさんの唇が、あたしのに向かって動く。「トラ、」噛みつくようにキスをしてきた。キッドの手はローさんの腕にはもうない。目を閉じてるローさん、でもなぜか笑っているように見えた。静かに離れていくと、ローさんはあたしの唇を親指で拭う


「ロー、さん」
「行くぞナマエ。じゃあなユースタス屋」


キッドはただ呆然とそこに立ちすくんでいる。あたしも、立ちすくんでいる。ローさんがあたしを引っ張り船に乗り、次はあたしが船に乗る番だった。段々なぜか顔がみるみる赤くなってきた。大きなキッドの声であたしの名前が呼ばれ振り向くと、キッドがあたしに何かを投げてくる。


「!こ、これ何」
「土産だ!シャボンディ諸島で、待ってる!」