キッドは頭がいいらしい。あたしが左に行けばそっちじゃねえと言い張って右に行けば、人が多い大通りに出て、あたしが右に行けばキッドがまた左に行くぞと言い張れば、レオの家に近い道に出た。しかし家がどこにあったかなんて忘れてしまった。 「(うわあやっちゃったな)」 「どうしたナマエ、お前外科医知ってんだよなあ、おい」 「…ん?アレ?」 細い道から出たのはレオだった。するとおじさんが目をかっと開いて、逃げだそうとキッドの腕を振り払うが、キッドの方が力が強い。「おとう、さん?」 「お父さん!お母さんがいなくなった!」 「はあ!?ローさんは!」 「お母さん追ってどこかに行っちゃったんだ!」 「…ローさん、だと?」 「方向は!」「家出て右に行ったんだ!海の方かもしれない!」「何してんのよ海に飛び込むつもりなのあんたの母親は!」海の方へ、能力を使って行こうとするとキッドに呼び止められた。「トラファルガーか?」隠してもしょうがない。頷くと笑って「だと思ったぜ。船が後ろにあると思ったら、やっぱりそうだったなぁ」 レオがおじさんをずっと見ている。おじさんはレオから目を背けるようにして、地面を見ている。 「レオ、お母さんのところ行こう」 「嫌だ。折角お父さんに会えて、」 「ナマエ!!」 聞き覚えのある声が聞こえた。海の方を見ると、ローさんが息を切らしながらあたしに近寄ってくると、「お前、能力で女を助けられるか」と、言い放つ。 * 海に行けば、海に浮かんでいる、レオの母親。死んでいるのか、わからない。この場にはレオとおじさんはいない。いるのはあたしとローさん、そしてキッド。腕を出して能力を使った「キャッチ」この能力は、掴むだけで、引き揚げは力を必要とする。足を踏ん張って、力一杯腕を引くとレオの母親が少しだけ、宙に浮いた 「…!」 「ナマエ!早くしろ!」 「……死ん、で、る」 ◇ |