依頼を終え、さっきの酒場に行ってお礼を貰った。ガチャリ、カランカラン。高い細身の男と白熊がやってきた。「あ!いた!」白熊くんは大きく短い指であたしを指差した。いつものように愛想笑い、社交辞令で笑ってしまう。白熊くんはその大きな体で大きな刀を担いでいる、そこの男のものだろうか。 「ミョウジ・ナマエか?」 「…依頼しに?高いですけど」 「違う」 酒場の皆がざわざわする。こういうの、すごく苦手なんだ。男はあたしの隣に豪快に座り、あたしの目をじいっと見つめ、白熊くんから刀を受け取る。 「おれはトラファルガー・ロー。この島の薬草を取りにきた」 男、トラファルガー・ロー。酒場で噂になっていた男。あたしの隣に座っていた男。海賊。 「しかしこの島にお前みたいな強い奴がいるとは思わなかった」 「それはどーも。」 「そこでだ、俺と一緒に海賊やらねーか?」 一気に周りの皆が騒ぎ始めた。やめてほしいこういうの、恥ずかしいから。いきなりあたしの横をすり抜けていった男が一人。「北の奴だ!」まずい、聞かれたか。マスターが北の奴に叫ぶが、北の奴が止まる筈がない。 「北の奴?」 「あたし行ってきます!」 「じゃあ俺達も行くか、ベポ」 「アイアイ!」 「…ついてこなくていいよ」 この島には北側と南側にわかれて村がある。あたしがいるのは南側。北側の住民にはあたしは死神と嫌われていて、南側にしかいれない。北も南もお互いスパイを出していて、いつでも争いが起こってもおかしくない状態。今のこの状況がいい例だ。こうして南側に海賊が就いているなんて知れたら、堪らない。 さっきの北のスパイは足が速い。泥棒がなんかやってたのかな?とんずらが得意そうだ。一気にあたしは加速して右手を広げてを北のスパイにかざし合わせる。 「キャッチ」 広げた右手をぐっと握る。「うわあ!」北のスパイ捕獲。そのまま右手を握ったまま、北の奴に近づくと、北の奴は肩を震わせてあたしから視線を反らした。もう少しで情報が流れるところだった、あたしは小さくつぶやいて後ろにいるトラファルガーさんと白熊さんの方へ首を曲げる 「ひぃ…!殺さないで!」 「そんな殺すわけ…まあいいや。ちょっとトラファルガーさん!白熊さん!」 にやにやして近づいてきたトラファルガーさん、白熊さん。「ちょっと、持ってて」北のスパイの腕をがっしり掴んでもらった。が、トラファルガーさんはほとんど掴んでいなくてほとんど白熊さんが掴んでいる。村長に連絡を入れなければならない。近くの家で村長に連絡をして数分、村長の執事のステファさんがやってきた。「お願いします、」「わかった」 「おいナマエ」 「え?なに…なんですか」 「お前、海賊に命令をすると言う事はどうなるかわかってるのか?」 「さあ、海賊なんて怖くないですから。お礼をしろと言われれば、しますけど」 右手を楽にして一息をつく。「能力者だな…やっぱり」うん。そうだよ。きっと。トラファルガーさんを無視する。この後、北のスパイはどうなるんだろう。村長に聞いてみよう、でも、きっと殺されるんだろうな。殺さないで、なんて言えない、あたしだって人をたくさん殺してきている。言えるはずがない。 ◇ |