「よし、行くか」 「は?行くってどこに?」 「おれの船に決まってるだろ」 「ないないないないない!」 いつの間にかキャプテンキッド、あたしの首に腕を回していてずんずんと歩を進めていく。近くにあったドアに、力任せに掴み進行を止める。それに対抗してキッドも強い力で進行を進めた。やはり男の女の差、なのだろう 「ちょっと離して!」 「あ?うるせえ黙って歩け」 「ちょっとちょっと顔近いあっち行って!」 「うるせえな。おいキラー!……おいいるかキラー!」 近くにキラーはいないようだ。あれ、今だよねキッドの力が緩んでる今が逃げるチャンスだよね!よっしゃやったる! 「スピード!」 「あっ」 うまく逃げられた。短い間だったけどキッド、アディオス!さてレオの家に行こう。ローさんの方は終わってるかな、あ、でもそう早くは終わらないか。 「おい嬢ちゃん」 「はい?」 40代ぐらい、に見えるおじいさんがあたしの肩を叩いて「ちょっくら酒呑まないかい」と誘ってきたので、未成年なんで飲みませんごめんなさい、そう断れば笑われて「嬢ちゃん海賊だろう?」と言ってきた。否定すれば「初めて見る顔だ。海賊に違いねえ。酒はもういい。ジュースでもなんでも奢ってやるから一緒に話そうや」そう言って肩を軽く2回叩いた。 あの島では別に、悪い人もいなかったし、悪いやつがいたら逃げた。だから今回もきっと大丈夫だろう。 「じゃあジュース奢ってくださいね」 「いいねえ。近くに安くていいとこあんだ。紹介しよう」 「でも危なくなったらあなた倒してでも逃げますよ」 「ははは!上等だ。さあ行こうか」 さっきとはまた別に、人手が少なくなった所に来た。小さい男の子が、おじさんを見つけて「おじさん!」と笑顔で走ってくると、おじさんも笑って笑顔でその子を受け止める。この人、いい人なんだ。 「ごめんな坊主。今日はちょっと遊んでやれねえんだ」 「そう?どうして?」 「この嬢ちゃんとちょびっとな」 男の子はあたしを見てにっこり笑って、暗い路地に入っていった。ずいぶん、服がぼろぼろだった、治安が悪い場所なんだろう。「男の子っていいよなあ」おじさんが呟くように先程の男の子が消えた場所を見つめ、ぼそりと言った。 「(あ、レオの家から離れちゃったかも)」 「嬢ちゃん、行くか」 「…あっ、はい」 あんまり遅いとローさんに怒られそうだ。日が落ちる前にレオの家に行けばいい、それか船に帰ればいいんだ。それに、あたしはまだローさんの海賊団のクルーじゃないんだし ◇ |