「狼さん!」 船から飛び降りて狼の隣に着地、のはずだったのに尻もちをついてしまった。尻もちをついた反動で右肩が痛んだ。お尻をさすりながら立ち上がると村長があたしの前にやってきた。「ミョウジ・ナマエ」「…はい」 「お前をこの村から追放する。」 「え?」 「残念だ。きっといつか北と争い事が起きるのだろうに。お前がいなくなったら南はきっと終わるだろう。じゃがもういい。追放する。海賊にでもなんでもなればいい。裏切り者をこの南の村にはおけん」 「……絶対に、何ですか。あたし行くところ、ない、のに」 「だから!おれの所に来い!おれがお前を買ってやる!」 ローさんがあたしに声を張り上げる。上を向くと、ローさんが下りてきた。狼は牙を向けるのを止め、あたしの隣にきた。この狼が北の番人とはどういう事だろう。この狼の瞳を見ていると、なんだがその事は聞かない方がいい気が、する。 「ナマエ。」 「…は、はい」 「オレはヨウ。オレのせいで、ナマエが追放された。償いにオレがナマエに仕える」 「え?仕えるって…あたしに?」 「そうだ。だがこの森からは離れられない。母親が、オレを待ってる。ナマエが持ってきてくれた薬草を、使いたい」 あたしが、見つけた薬草の事だ、ヨウは無事受け取る事ができたんだ。 「心の中でオレを呼べば オレはナマエの前に現れる。」 「決定だな」 「お前はおれのだ」 「まだ、返事してませんけど…」 「じゃあ追放された。さてこの後どうする?」 「……それは」 「ホラ決まったろ?」 無理矢理すぎだよローさん…。といっても、行くあてもない。ローさんについていけば、とりあいず寝場所も食べ物もある。それにローさんの首は2億ベリー、海賊に狙われる心配はあるだろうけど、なんせ2億ベリーなんだし、あたしが戦わなくたっていいだろ、死ぬ心配もない。 「…わかった。とりあえず、ローさんの船に乗ります」 「おう」 「でも、クルーになった訳じゃないのでそれにキャプテンって呼びません。」 「…フン。面白い。絶対おれのクルーになってよかったと言わせてやる。おい村長。世話になったな。お前ら!たった今一時のクルーが増えた!今日は宴だ!」 船でどんちゃん騒ぎが聞こえる。村長が笑って「ナマエ今まで守ってくれて、本当にありがとう」と言った。村長を見ると、涙を浮かべている。ステファさんはいない。周りのギャラリーは包丁やフライパンを下に下ろしてあたしを見ていた。村長に目を向けお礼を言う。 「お世話に、なりました。」 「もう裏切り者にくれてやる言葉はない。さあ行け」 「……はい!ホントにお世話に、なりました!」 「さあさっさと行けえぇ!」 * わんわん泣いて、この島ともお別れした。この海賊の船ハートの海賊団、とかだっけか。忘れちゃった。マスター、そういえばあのときいなかった。 村長やマスターが教えてくれた事を思い出した。あたしが海に流されて、一週間、あの島に着いた。今でもあの島の名前は知らない。そしてあたしを拾ってくれたのが村長と酒場の店主さんだった。小さい頃からこの能力が使えて、それでよく人殺しに使われてた。『デス』の能力は一回使えば寿命が2ヵ月縮まる。今まで何回使ってただろう 「ナマエ、船酔いはしてないか?」 「ローさん…あ、大丈夫です」 「敬語はいらねえ。さん付けもいらねえ」 「…わかった。でもローさんっていうの馴れたからローさんで」 「チッ」 「なぜに舌打ち?」 「お、そうだ。今日はお前が一時クルーって事で夜は宴するぞ。未成年でも酒は飲ますから覚悟しろよ」 「…うん」 ◇ |