東金千秋
「……どうした」
呟かれた言葉に返事は返さず。ただ黙って千秋の背中に体重をかける。体育座りのような、なんだかよく分からない体勢のままに沈黙が続けば。
「まったく、大の男が何をそんなに落ち込む必要があるのか分かったもんじゃねえな」
ふ、と笑って言われたそれにさえも妙な寂しさが募って。
「他所の言葉使わんといて」
ぽつりと吐き出したそれは千秋に届いたのか。
「夏休みの間だけやろ」
小さく返された返答。
「俺、寂しくて死ぬで」
「あほか、ウサギちゃうやろ」
「やって千秋が好きなんやもん」
「さよか」
返された言葉とは裏腹に緩く微笑んだ千秋を引き止めるなんて俺には出来るわけもなかった。