伏黒恵

「オマエってあんま表情に出して笑うことってない？」
「……急に何かと思えば」
「いや、なんか恵が爆笑してる姿見てみたいなって」
「何もねぇのに笑えるかよ」
「そーれーなー」
「……ふ、伸ばすなアホっぽい」
「あ」
「あ？」
「今ちょっと笑った」
「……ちょっとな」
「その律儀にちょっとって単語繰り返すのも好きだよ」
「……は？」
「あ」
「え？」
「ポロッと出ちゃった」
「表現おかしいだろそれ」
「ほら恵と話してて楽しーいって思ってたらつい」
「つい、なんだよ」
「ついつい、好きだよーって洩れちゃった的な？」
「……よく笑うヤツが好きなのかオマエ」
「うーん、そういうわけでもねぇけど」
「けど？」
「恵が笑ってんのは好きだよ」
「……ふ、なんだそれ。俺専用ってことか？」
「そう、恵専用」
「……そーかよ」
「あ、またちょっと笑ったな」
「あいにくオマエより表情筋が発達してないから」
「から？」
「爆笑……は、またそのうちな」
「ふは、なにそれ爆笑してくれる気ぃはあるんだ」
「……面白けりゃ笑うだろ、人間だ俺だって」
「ん、そんじゃ恵を爆笑させんの頑張ろっと」
「……俺専用なんだろ笑ったら好きっていうやつ」
「ん、専用。覚えといて」
「……おー」

くだらない笑顔