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佐伯虎次郎


 ※女主

私の恋人は優しくて格好良くて、おまけに色々な人から慕われている最高な人。そんな人が私と付き合ってくれているなんて今でも信じられない時がある。でも前にその事を話せば、彼は柔らかな笑みを浮かべて言ってくれた。
「くれてる、じゃないだろう。俺は志貴が好きだから付き合ってる、ただそれだけだよ」
私は何よりもその笑顔が大好きで。ずっと私だけの彼で居て欲しい、そう思ったのはもう何度目だっけ。
でも、やっぱりそんな彼だからこそ不安はある。私で良いのか、他にもっと素敵な相手が居るんじゃないかって。だから私は彼を愛称では呼ばない。誰からも呼ばれている愛称じゃあなくて、ただ少しでも別に考えて欲しくて。私はサエ、とは呼ばないって決めている。

「佐伯、改めて誕生日おめでと」
今日は大好きな佐伯の誕生日。部活後に佐伯の家へお邪魔してご家族と一緒に誕生日パーティー。一応、私と佐伯は家族公認のお付き合いをさせてもらっている。こう言うのって昔から憧れて居たし、何よりも私は佐伯と一緒に居て良いんだって、そう思えるから。
その後は佐伯の部屋で二回目の誕生日パーティー。おばさんが気を遣ってくれたのか、今は佐伯と二人きり。
「あは、さっきも言ったけど……ありがとう。嬉しいよ」
いつもの爽やかな笑顔でそう言われて、自然と私の頬は熱くなる。そんな私を見て佐伯はまた柔らかい笑みを浮かべてくれるのが堪らなく嬉しかった。
「えと、プレゼント……佐伯に気に入ってもらえるかは分からないけど」
そう言って鞄を取ろうと伸ばした腕を不意に掴まれる。私の腕を掴んだ佐伯は何かを言おうとしているのか、しきりに視線を彷徨わせて見せた。
「……一つ、気になっていた事があるんだよね」
その言葉を最後にまたも口を閉ざす佐伯を、そんな佐伯に首を傾げる私。
「……どうして、君は俺の事を名字で呼ぶんだろって。最初は付き合い初めだからかなって思ったけど、いつまで経ってもそのままだし、」
項垂れてそう呟く佐伯を見て、胸が熱くなる。理由を教えたら、呆れられちゃうかな、だとか。色々思う事はあったけれど、佐伯にそんな悲しそうな表情をさせたくないって気持ちが一番大きかった。
「あの、ね……サエって呼ばれているでしょ、佐伯は。私ね、本当に佐伯が大好きで仕方ないんだ。でも佐伯は皆の人気者で、皆に愛称で呼ばれてて。何て言うのか、私だけが佐伯の特別で居たかった。だから私は佐伯って呼ぶの、意味……分かるかな」
一通り話したら、体が急に温かくなって。あ、抱き締められたんだって、頭の片隅でそう理解した。
「……そっか。俺、少し不安でね……だけど、君がそんな風に考えてたんだって聞いた今は凄く嬉しいや」
ぎゅう、と抱き締められて。こっちまで嬉しくなっちゃう様な声音でそう言われて。
「……君は、いつだって俺の特別だよ」
大好きな人の腕の中で、そう言われれば自然と涙が溢れて止まらなくなった。
「あは、泣くことでもないと思うけどなあ。だって、俺にとっては当たり前のことだからさ」
涙を拭いながらかけられた言葉。それまでの不安が嘘の様に、気持ちは暖かくて。佐伯は私を嬉しくさせる天才だな、ってそう思った。


≠特別
(私の隣には彼が居て)
(=当たり前)
‐End‐