来栖翔
※女主
私の目の前では翔が普段とはあからさまに異なる行動を繰り返している。言うならば、そわそわ、か。ソファに座ったり立ったり、漸く落ち着いたと思いきや今度は足を組んだり、組み替えたり。正直言って目の前でわたわたと慌ただしい動きを見せられるのはこちらとしても落ち着かないわけで。
翔、と声を掛けようと口を開いた直後。彼も同じように私の名前を呼ぶものだから私は開いた唇をまた元のように閉じる羽目となる。どうしたの、という意味が伝わるように少しばかり首を傾げて先を促せば。
「な、なんか渡すもんとか、ないのかよっ」
背格好に似合わず、思いの外大きな声量で言われたそれを頭の中で咀嚼する。つまりはチョコ、が欲しい、で良いんだろう。なんだそんなことか、と脱力半分、なんか可愛いなこいつ、と母性半分。とりあえず二つの感情がごちゃ混ぜになったままに傍らに置いた鞄を漁って目的の物を取り出した。
挙動不審
(ボスには内緒に、ね)
(戯れに耳元へと囁いた言葉に翔は面白いくらいに肩を跳ねさせて見せた)
‐End‐