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「#幼馴染」のBL小説を読む
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鏑木・T・虎徹


 ※女主

「ほらよ」
目の前に差し出される紙袋とタイガーの顔を見比べること数回。何よこれ、私の呟いた声は随分と掠れていて我ながら少しばかりしくったなあ、と後悔した。
「また出動要請が来ないうちに渡しとかねえと、ってな」
ったく、おじさんお菓子は専門外なのになあ。ぼやくタイガーの言葉を右から左へと流して受け取った紙袋を丁寧に開いていけば。
「……マフィン、よね」
「ん、そう。言っとくが味は期待すんなよ」
頬を掻きながら、視線を逸らされながらのその言葉。ああ、もしかすると彼は以前に私が戯れに吐いた言葉を律儀に守ってくれたのかと漸く合点がいく。
「バレンタイン、貰う側になりたいって言ってただろ。ってもこんなおじさんなんかが頑張らなくてもお前なら選り取りみどりだろうがな」
んじゃ、シャワー浴びてくっから。早足に歩き去る間際に髪をぐしゃりと撫でられながらの言葉。


じょしりょく
(タイガーのくせに女子力高いわよ、)
(背中に向けて呟いた言葉に彼は後ろ手にゆるゆると手を振った)
‐End‐