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宍戸亮


 ※女主

不意に鼻をつく匂いに瞬きを数回。どうしたの、なんて辺りを見渡す姿に頬が緩んで。ああ自分のことながら腑抜け過ぎ、激ダサだぜと溜め息を吐いた。
「なんか、すげえ……甘い匂いがする」
なんの気にもなしに呟いた言葉にはわざとらしいくらいの溜め息が返されて。俺なんかしたか、と些か不安を感じつつも後の言葉を待てば。
「相変わらずだなあ、宍戸は」
何でか眉下げた、いわば苦笑っつうのかまあそんなような顔でそう言って。ガサゴソと鞄を漁る姿に立ち尽くすこと数分。はいこれ、手渡されたのは薄い青色をした小さな紙袋で。
「は?」
「ほらやっぱり忘れてたでしょ」
悪戯が成功したようなガキみてえに笑う姿に俺は何が何だか分からなくて首を傾げているだけ。ほらこれ、宍戸にだよ。手渡された紙袋から見えるのは丁寧に放送されたマフィン、とかいう菓子、のはず。
「バレンタインだから、頑張ってみたんだよね」
 少し早歩きをして俺の前へと回り込んで顔を覗き込まれての言葉。ああ、と。漸く理解した頭は瞬時に顔へと熱を伝えた。

さぷらいず。
(ふは、宍戸の顔さいっこう)
(……うるせーよ)
‐End‐