Nur wenig, und...


豪華絢爛親睦パーティ・ at跡部邸。

なぜこの時期にパーティなんてするのかは分からない。親睦、なんて名前付いてるけど、多分、跡部の気まぐれだ。

とはいっても。
「わああー!やっぱすごい!跡部すごい!」

豪華な食事に高級ホテルにありそうなシャンデリア。あ、その辺の高級ホテルより跡部の家の方が高級だよね。とにかく、庶民の私にとってはまさに夢の世界!
毎年何回か跡部はテニス部のみんなと、マネージャーの私を誘って「個人的な」パーティを開く。個人的って言っても、まあそこは跡部基準だけど。
そういえば世の中リア充、って言葉を最近よく聞くけれど、大好きな仲間と一緒に、跡部の家でこんなすごいパーティができるなんて、それこそリア充だと思う。

しかも今日は私、ドレス着てる。跡部に、ナマエお前パーティなんだからちゃんとドレス着て来いよ、なんて言われたから、気合が入った。華奢な細いヒールの靴も履いて、いつもより女の子らしくなってるって、自分でも思ってみたりする。

「ドレス似合っとるやん。ナマエも女の子やったんやなあ。」
声を掛けてきたのは、忍足。…後半部分は余計な御世話だ!

「で?跡部とはもう話したん?」
「まっ!まだだよ!…何か忙しそうだし。」
「ま、がんばりや。お世辞やなくて、ほんま今日はかわいい思うで。」

忍足は、私が跡部のこと好きだって知ってる。いっぱい相談に乗ってもらったし。
…なんだかもう口説き文句みたいなこと言われて、いや別に忍足に言われても嬉しくはないんだけど、ああ私応援されてるんだって気付いたのは一瞬遅れてからだった。がんばりやって、別に今日何かしようってわけじゃない。うん。でもまあ、普通に話とかできたらいいなあ、なんて。いつもの、コートで話す時とは、やっぱり違うし。

マネージャーとしてずっとそばで跡部のこと見てきたけど、跡部って、すごく優しい。あんまりそう見せないようにしてるけど。部員のこととか、ほんとによく見てる。俺様で、あんまり人の話聞いてくれなかったりするけど、テニス部 200人の頂点に立ってて、生徒会長も務めてて、…やっぱりすごい人だ。

跡部のこと考えてたら、胸がどきどきしてきた。おまけに、意味分かんないけど涙も出そうになった。
どうしよう、こんなに、好きなんだ。

はっと我に返って、一人でそんな風になってたことがちょっと恥ずかしくて、慌てて周りを見回した。

あ、跡部だ。
きっちり正装してる。もちろん他のみんなもそうなんだけど、跡部は別格だ。死ぬほどかっこいいと思う。…すごい主観だってことはわかってますよ、はい。
給仕の人と何か話してる。多分パーティーの進行についてとか、そんなところだ。
しばらくそれを見てたら、ふと跡部が顔を上げて、ばちっと私と目があった。
そしたら跡部は、…何でだろう、一瞬目を細めたらまたすぐ目を逸らした。ていうか、何か睨まれたみたいな感じなんだけど…?

それから何回か、跡部を見た。
見ただけ、だったけど。いつもだったら、すぐ声かけてくれるのに。どうにかして話しかけようと思って跡部の方に行くけれど、いつの間にかすっと跡部はいなくなっている。
…あれ、おかしいな。私なんか避けられてるような気がするぞ…?
とうとうそんな思考に行きついた。
どうしよう、すごく悲しい。確かに、私は跡部に釣り合うような性格もしてないし、跡部ファンの子の方が何倍もかわいい。でも、でもさ。そんなに避けられるほどではないと思うんだ。…もしかして、うぬぼれてたのかな。

ああ、だめだ。そんな風に思っちゃったら、考えること全部がもっとネガティブになる。デフレスパイラル!ってやつか!


…足が痛い。
普段ローファーかテニスシューズしか履かない私にとって、 10センチ近いヒールはキツイ。
トイレに行ったついでに靴を脱いでみてみたら、靴ずれで悲惨なことになってた。
今日に限って絆創膏とか持ってないし。

せめて、と思って、ティッシュを折りたたんで靴の先に詰めてみた。…少し楽にはなったけど、結局あんまり変わらないなあ。

痛くて痛くて、壁に手をついて休む。
ああ、私せっかくのパーティで何やってんだろう。

「ナマエ?何してんだ?」
「ひゃあっ…ったあ…」
いきなり肩をたたかれて、びくっとした。その拍子に足に力が入っちゃって、靴ずれ部分にクリティカルヒット。

「?どうした?」
ていうか跡部!

「あ…いや…靴ずれが、ちょっとね…」

何でよりによって跡部!

こんな惨めったらしいところ、跡部には……好きな人には一番見られたくないのに。
「ほら、ちょっと見せてみろ。」
「な!何すんの!」

そう言ったかと思うと、あろうことか跡部はしゃがみ込むと私の足をつかんで靴を脱がせた。

「…ひどいな。」
「ちょっと !跡部っ!」
「座れるとこ行くぞ。」

無視か!

「ほら、肩貸してやるから。」
だから無視!?
跡部は私の言うことなんか聞かずぐいっと私を引き寄せて、気付いたら私の右腕は跡部の肩に掛けられていて。半分抱えられてるような状態。

て、いうか!こ…これ、顔近い……!!
肩貸されてるから当たり前なんだけど、顔がすごく近くて、おまけにわたしの体を支えるために跡部の左腕はしっかりと私の腰に回されている。

うああ…もう、やばい。これ……幸せすぎる…
もういっそ、靴ずれにすら感謝したい気分。さっきまで憂鬱だったのにね。なんて調子いいんだ私。

「うっふぁ!」
小さな段差につまずいて、バランスを崩して思わず跡部にしがみついてしまった。しかもなんだ今の声!
いきなりびっくりしたのか思いっきり体重かけちゃったからか、跡部が息をのむ音が聞こえて、それにどうしようもなくどきどきして。

ああもう死んじゃいそう。
好きな人の腕の中で死ぬ…なんて、今どきドラマにもない展開だよ。

「大丈夫か?あそこのソファに座るぞ。」
恥ずかしくて、どきどきして、息ができない。けど、あそこのベンチまで行ったらそれも終わりなのかと思うと、贅沢にも寂しくてきゅっと胸が苦しくなった。

跡部はベンチに座る時にも支えてくれて。

離れたくないとは思ったけど、落ち着いたら恥ずかしさがめちゃくちゃこみあげてきて、私は跡部の肩に掛けられていた右腕をさっと引っ込めた。

それから、腰に回されたままだった跡部の左腕も同じようにほどこうとしたら、……もっと力を込められた。

な、何してんのーー!!
頭、パニック。

「ちょっ、跡部!何っ!」
もう大慌てで、何にかは分からないけど何か必死だった。

そしたらあろうことかさらに腰を引き寄せられて――はっと気づいたら、ほんと、私の顔のすぐ横に跡部の顔があった。
その顔は私の肩に埋められてて。

「…なあ、あと少しこのままでいろよ。少しで、いいから…」

くぐもった声でそう言うのが聞こえてきた。

硬直、した。

私の心臓はもうこれ以上ないくらいにばくばくで、肩には跡部の呼吸と、同じように打ってる心臓の鼓動が伝わってきて。

……同じように…?
跡部の心臓、どきどきしてる。
私、みたいに。

そのことに、これ以上ないと思ってた私の心臓が一際大きく跳ねた。

「……跡、部…、跡部の心臓、すごく、どきどきしてる……」
「…んなこと、言うんじゃねえよ…」

「こんなこと、私…」
「…何なんだよ、お前、そんなの、着やがって…」
「え……」
「こんな、…っ似合いすぎなんだよ…」
「だって、跡部が…」
「肩だってこんなに出しやがって。ちっ…こんなはずじゃねえのによ…」

最後は独り言みたいにつぶやくと、跡部はいきなり顔を上げて、有無を言わさないといった目で私を見つめた。
「ナマエ、お前…俺の彼女になれ。」

またもや硬直。
跡部の言った言葉が脳に届くまでに、たっぷり 3秒ぐらいは経ったと思う。
理解したとたん、かっと顔が熱くなった。

「あ…とべ……」
「嫌だなんて言わせねえ。この俺様が、ずっとお前だけを見てたんだからな。」

うそ…
「跡部…、私のこと、…その、す、好きだって、思ってくれてるの…?」

跡部の顔が赤くなった。少し眉を寄せて、目を逸らす。
だからなんで、そういうしぐさまでかっこいいの……
「言わせんな、よ」

……
「あと、べ…っ」
「っおい、何で泣くんだ…っ」

いつの間にか、涙がこぼれていて。
跡部の顔、はっきり見てたいのにこんなぼやけてちゃもったいないよ。
「跡部、大好きだよ、大好きなの…っ」

小さく息をのむ音が聞こえたかと思うと、思いっきり跡部に抱きしめられた。今度は真正面から。
「ナマエ…好きだ。誰よりも、お前が。ずっと、側にいろよ…」

私はうなずくかわりにぐすんと鼻を鳴らして、跡部の背中に腕をまわした。

「俺もあれだよな、ナマエが痛い思いしてるってのに、またとないチャンスだって思ったんだ。」
幾分気分が落ち着くと(心臓はまだ当分落ち着きそうにないけれど)、跡部が小声で言った。
「…私こそ、靴ずれに感謝したい気分だよ。…そういえばさ、今日私のことすっごい避けてなかった?」
「…言っただろ、ドレス似合いすぎだ、って。そんな恰好してるお前と、普通に話せるかよ。」
きまり悪そうに言った跡部は、抱きしめていた腕の力を少し強くした。


End.


初☆跡部夢!
ああ、無駄に長い。パーティという設定を存分には生かしきれずこんな結果に。ていうかドレス着て来いと言われて普通に着ていける中学生(笑)
きっと告白されたことは今までに山ほどあるけれど、自分から告白するのは初めてな跡部くん。どうしたらいかわからないから、ついついいつもみたいに俺様なんですよ、きっと。不器用だなあもう!ていうか言わせんなじゃなくて言えよ!(笑)
侑士の関西弁も難しいですが、標準語とはいえ俺様感を出すのは難しいですね…(私は西の人なので標準語も危ういですが…!)結局のところ、彼の話し方がよくわからないのです。


2011.2.6

|
page:

page top
top main link clap
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -