想曲


満天の星空、私を包んで。


真夜中。
身を切るような12月の冷たさの中、中庭に佇む1つの影――

彼女は星を見ていた。

冬の澄んだ大気に。
張り詰めた空気に。

瞬く、星々。

そこにひときわ明るい星――

――シリウス――

青く光る、全天で最も明るい星。


「ナマエ?何してんだ、こんな時間に、こんな寒いところで?」
「あ、シリウス…星を、見てたの。」
人影は振り返り、答えた。
「寒くないのか?」
「寒いけど、あんまり星空が綺麗だったから…」
「まったく…どこに行ったのかと思った…」

彼は彼女の隣に立ち、彼女の肩を抱いた。

「本当、綺麗だな…」
「でしょう?」

2人はその場に座り込む。


「シリウス」
「ん?」
「いい名前ね」

――青く光る、全天で最も明るい星――

「ほら、あれだよ。あの、大きな青い星。全天で一番明るいんだよ」
「あれが、」
「シリウス」

凍り付くような寒さの中、身を寄せ合って。

「じゃ、ナマエ、知ってるか?」
「なにを?」
「シリウスには伴星があるってこと。よっぽどいい望遠鏡じゃないと見えないらしいけどな。」
「知らなかったわ」

彼は微笑む

「ここから見ると1つに見えるけど、…ちょうど今の僕たちみたいに寄り添っているんだ。」

彼女は彼をじっと見つめる。
彼は微笑んだ。

「シリウスとその伴星は、ずっと、決して離れることはない。ナマエ、君も、ずっと僕のそばに――」

彼女も、微笑んだ。


凍り付くような寒さの中、身を寄せ合って。



満天の星空、2人を包んで。


End.


私が初めて書いた短編でした……多分2007年です。
「夜想曲」という言葉が好きです。「ノクターン」を「夜想曲」と最初に訳した方、尊敬します。「夜を想う曲」…素敵です。


2010.12.13:加筆修正
2013.9.14:加筆修正

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