Parallel World


「う…そ!やった…!やったよ白石!!同じクラス!ほら!」

そうやってナマエは名簿の中にある名前を指さす。
けど、その指の先にあるのは俺の名前と違う。

新学期早々、また自分はそないにして俺の心をえぐるんや。

新学期、桜の花は満開で、きっと ナマエ の今の精神状態も春爛漫や。
俺 ?俺は…そうやな、例えるなら散って茶色う変色して、誰にも顧みられずに腐ってく花びらみたいなもんや。

ナマエには好きな奴がおる。
中学3年、最終学年にして初めてそいつと同じクラスになれた、そういうことや。

俺には好きな奴がおる。
これまでの2年間同じクラスやったのに、最終学年の今年になって離れてしもたのが今わかったとこや。

俺とナマエが出会ったのは、2年前のこの時期やった。
初めてのクラスで席が隣で、性格とかそんなに似とるわけでもあらへんかったのに意気投合して、それからどんな悩みでも相談するようになるまではそんなに長くはかからへんかった。
中2になっても同じクラスで、俺が2年にしてテニス部の部長になった時も、部員の前ではさらけ出すことなんてできひんかったいろんなこと打ち明けて、ナマエはそれをずっと聞いててくれた。

やから、自然な流れやったんや。俺がナマエのこと、好きになったんは。

俺がナマエのことを好きになったのと同じくらいの時に、ナマエにも好きな奴ができた。
俺は顔も名前も知らへんかった、文化部に所属しとる奴やった。

それを聞いた時、ナマエは俺にそのことで相談してたんやけど、俺は一瞬、周りの音も聞こえんようになるくらいにショックやった。

「ねえ聞いて聞いて!席、隣になったんだよ!」
「へえ、そらよかったやんか。一歩前進やな。」

放課後、部活が終わって帰るところにちょうどナマエと鉢合わせた。
嬉しそうに語るナマエは幸せそうで、俺はこんな表情させてやれへんのか、て思たら虚無感に襲われた。
けど、ナマエが幸せそうに笑えてるんなら、それが俺に向けられたものやなかったとしても、俺はそれを壊したいとは思わへん。

いまだにずっとナマエの相談に乗ってんのも、ナマエにはずっと笑ってほしいからで、この心地のええ「親友」っちゅうポジションを失いとうないからなんや。

「ほんと、白石が友達でいてくれてよかったって思ってる。優しいし、すごく的確なアドバイスくれるし。ほんと頼りにしてるよ!だから白石も何か悩みとかあったら言ってくれればいいからね !」
「おおきに。またなんかあったら相談するわ。そん時はよろしゅうな。」

俺には好きな奴がおって、そいつはめっちゃ仲良うて、お互いに信頼しあえてる。せやけどそいつ、…ナマエ、そう自分や。そいつには別に好きな奴がいてるんや。
なあナマエ、俺はどうしたらええんや ?

そないなこと、聞けるはずもないやんか。

「どないやったん?デートは。」
ゴールデンウィーク明け、明らかに幸せオーラが増しとるナマエにそう聞いた。
月日は順調に流れて、ナマエとあいつ…確か宮本やったっけ、の距離も順調に縮まっとった。

思い切ってどっか二人で出かけてみたらええやん、そう言うて勧めたんは俺。
またや。また俺は、自分の首絞めるてわかってんのにナマエにアドバイスしてまう。

宮本くんが映画に誘ってくれた。
学校、一緒に帰ることになった。

ナマエは俺の一番して欲しい顔、幸せそうな顔をようするようになった。
全部、あいつが。俺やなくてあいつがそれをナマエに与えてるんや。

親友って、最悪なポジションやな。もう、それ以上になれへんやんか。
それでも、ナマエが好きな俺は、ナマエに想われてへん俺は、そのポジションにしがみつくことしかできひんのやろか。

なあナマエ、俺は一体どないすればええの――?

『もしもし!白石!どうしよう私、…私、宮本くんと付き合うことになった…!』

それは夏の終わり、暑さが和らいできた 9月のことやった。

「ほ……んまか?ついに、やったんやな。」
「どうしよ、どうしよう白石、私もう幸せすぎて…っ、ありがとうね、白石のおかげだよ。いつも相談に乗ってくれたからだよ。だから一番に電話したの。本当に、ありがとうね…!」

電話でよかった。
ナマエが目の前におらんくて、ほんまによかった。
きっとお前は今、俺がこれまでに見たこともないほどの幸せそうな顔しとんやろな。
よかった。
お前が幸せになれてよかった。

好きやから、大好きやから、幸せをずっと願っとった。
ナマエが幸せでいられるんやったら、そう思て、これまで自分を追い詰めるような真似して相談に乗っとった。

ナマエが幸せになれて、よかったと思えてるはずやのに。
せやのに、何で、…何でこないに……苦しいんやろ。

せめてもの救いは、ナマエの好きな相手が俺の知り合いやなかったことか。
空っぽで、空っぽすぎて冷静に思考が働く。

なあ、ナマエ、教えて。
俺はどこで間違ってしもたんやろ。

ああ、空っぽすぎて泣ける気いすらせえへん。


End.


久々に描いた切ない夢、しかも初白石短編。切ない夢書きたい症候群に陥って二日ほどで書き上げてしまったので文章がまとまりきってない感が否めない……
続き、というか別バージョンも考えているので、それを想定したうえでの題名となっております。
ごめんなさい白石くん、初めての短編なのに幸せになれなくて。


2011.10.28

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