ニスマジック


「テニスしてる時の忍足ってさー、すっごいかっこいいよね。」

休憩しようとベンチに座ったら、側にいたミョウジ、あ、マネジャーなんだけど、がいきなりそう言った。

「…はあ?」
「いやいや向日さん、あれはどう見てもかっこいいっしょ。」
ミョウジはひたすら侑士を見てる。

「いや別にミョウジが侑士のことどう思ってようと関係ねえけど、何で俺に言うんだよ?」
「あー、そうだね、顕著なテニスマジックだと思って。」
「は?」
「私の造語なんだけどねー、」
そう言うとミョウジは『テニスマジック』について説明しだした。

要するに、普段全然そんな要素無いのに、テニスしてる姿だけはすげえかっこいいから、そいつのこと自体がかっこいいんだと誤認してしまうこと、らしい。

「…ミョウジお前、それ結構ひどいんじゃね?」
「だってさあ!忍足、テニス以外の時は何か髪の毛うざいしムッツリだし鉄面皮だし女癖悪いし良いとこなしでしょ?この間もね、」

そうやってミョウジは普段の侑士エピソードを並べてく。
えーと、俺、一応侑士の友達なんだけど。つーか、次の大会は侑士とペア組むんだけど。
…それにお前、どんだけ侑士の日常を観察してんだよ。

「ひでえよ、お前。」
「いやいや、だから、テニスしてる時はめちゃくちゃかっこいいんだって!」
「じゃーなんで侑士なんだよ?俺とかじゃなくて?」
「あー、忍足って、フォーム綺麗じゃん。いや、他の人のがそうじゃないとかって意味じゃないんだけど、いわゆる教本通りって意味で綺麗なんだよ。岳人とか日吉とか、うちのテニス部って個性的な打ち方の人多いからなおさら目立つっていうか。」
「じゃあ跡部とかどうなんだよ?あいつも綺麗な打ち方してんだろ。」
「跡部はねえ、確かにきれいなフォームしてるんだけどね、何て言うの、あのゴージャスさがかっこ良さを上回りすぎてるんだよね。
…あ、ていうかギャップだよギャップ!忍足以外はさ、テニスの時とそれ以外の時のギャップが少ないじゃん。特に岳人とか跡部とか。その点忍足は日常生活とテニスのギャップが激しいから余計かっこよく見えるんだよ!!」

1人でテンション上がって語ってるミョウジは、それでもずっと侑士を見てる。
え、それってつまり、

「お前、結局侑士が大好きなんだな。」

思わず頬杖をついた。
中途半端ににやけてる気もする。

「なっ!そんなわけないじゃん!!テニスマジックだよー」

はいはいもういいって。
「だって、何か今までのお前の話聞いてても侑士のことになったらすげーうれしそうだぜ?」
「…だ、から、違うよ!テニスマジックだもん!」
「ほら、顔赤くなってるぜ!」
「もーだから違うってば、…あ。」
「え?…あ。」

ここでご本人の登場かよ。

「あー、ほんま、跡部と打っとったら体力使うわ。――ナマエ、飲み物とってくれへん?」
「はいはーい」
…そっけないな、おい。
さっきまでのテンションはどこ行ったんだよ。

「なあ、ナマエさっきずっと俺のこと見とったやろ。あんだけ見つめられたら照れてまうやん。」
「ミョウジはお前がかっこよくて仕方ないんだってよ。」
あー、何かちょっと楽しくなってきた。

「ちょ、岳人そんな誤解招きそうな言い方やめて!『テニスしてるとこが』ってとこが最重要なんだからね!」
「え、ちょお、テニスしとるとこ、て、俺のかっこええとこそこだけなん?」
「あ、あー。うん。ごめんけど。」
「うわ、何かショックやなそれ。俺はナマエのこといっつも可愛え思てんねんで?」
「「え゛」」
ミョウジと見事に重なっちまった。
そんで今俺の表情ひきつった。
そりゃそうだよな、侑士のやつ、何のためらいもなくそういうこと言いやがって。まあ今に始まったことじゃねえんだけど。

え、おいおいミョウジ。
お前何顔真っ赤にしてんだよ。
何だよ結局かよ。

あーもーいいや。めんどくせー。

「じゃー俺そろそろ練習戻るぜ。」
「ちょお待ち、岳人、」
俺が立ち上がったとこに、侑士ががばっと腕を回してきた。
ちょっと腰をかがめて、ミョウジに聞こえねえようにこそこそ話しかけてくる。

「ナマエと何話しとったん?」
は?
「別に大したことじゃねえよ。つーかお前のことばっかりだったぜ。」
「ふーん。…なあ岳人、あんまりナマエと仲良うしたらあかんで?」
「何言ってんだよ侑士。」
「マネージャーとして普通に接する分にはええんや。ええんやけどな、」
「だから何が言いたいんだよ?」
「必要以上にナマエと仲良うしとったら…俺の機嫌、めっちゃ悪うなるさかい、気いつけてな。」
侑士はあんまり見せない笑顔を見せてそう言った。

え…あの、指が肩に食い込んでんだけど。つかマジで怖えんだけど。目が全然笑ってねえ。
……あれ、そういや侑士、ミョウジのことさも当然のように名前で呼んでたよな。

はっ、お前もかよ。

…あーー、もうお前らさっさとくっついちまえ。


End.


まさかのがっくん視点。一応侑士夢です。
テニスマジックは本当にあると思います。すごい残念な人なのに、テニスしてる時だけは輝いてるというマジック。よくあります。そこから発展したことはないですが(笑)多分、テニスだけじゃなくても、そういうのってあるんじゃないでしょうか。プロの選手は記者会見の時のスーツ姿よりユニフォーム姿の方が断然似合ってる!と思うのは私だけじゃない…はず。


2011.4.25
2013.9.14:修正

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